大手予備校の学校法人河合塾(本部・名古屋市)のベテラン講師の契約打ち切りをめぐる労働紛争で、中央労働委員会は講師を復職させるよう命令した。講師側が6月7日に発表した。契約が終了してから7年以上がたっていた。
この講師は、河合塾ユニオン(首都圏大学非常勤講師組合河合塾分会)の書記長・佐々木信吾さん(59歳)。
「とても長かった。自分は数学の担当だったので、家庭教師などで食いつなげたが、他の教科では難しかったと思う」と語った。
ただし、河合塾側が、命令の取り消しを求める裁判(取消訴訟)を起こすと、解決までさらに時間がかかる。取材に対して河合塾は「内容を確認中なので、コメントは差し控えたい」と回答した。
●校舎内で厚労省のリーフレット配ったことなどが問題に
申し立てによると、佐々木さんは2013年8月、無期転換ルールなど、労働契約法の改正について解説した厚労省のリーフレットを職員数名に手渡した。
河合塾側は、施設内で許可なく文書を配布した施設管理権の侵害などと非難。過去の言動などと合わせて、塾の信頼を裏切ったなどとして、翌年度の契約を締結しない旨の書面を通知した。
これを受け、佐々木さん側は組合つぶしなどと主張し、愛知県労委に救済を申立てた。
●地労委で救済命令、河合塾が不服申立て
愛知県労委は2016年、河合塾の不当労働行為を認定し、復職やバックペイ(契約打ち切られてからの報酬)の支払いを命じた。河合塾はこれを不服として、中労委に再審査を申し立てた。
中労委は5月に交付した命令書(命令は2月17日付)で、愛知県労委の判断を支持し、河合塾の再審査申立てを棄却した。命令書の中で中労委は、佐々木さんを含めた「委託契約講師」についても、労働組合法上の労働者に当たると認めている。
河合塾ユニオンによると、河合塾では雇止めされた非正規講師や無期転換後に待遇を下げられた講師などとの間でも、裁判を含めた複数の労働紛争が起きているという。