「絶対にキミには迷惑をかけないから、連帯保証人になってほしい」。付き合って2カ月の彼氏からそんなお願いをされて、どう対応すべきかと悩む女性が弁護士ドットコムに相談を寄せました。
女性によると、彼氏の知人が東日本で飲食店を開業するという話が出た際、彼氏から「店舗の家賃の連帯保証人になってほしい」とお願いされたといいます。
なぜ彼氏が連帯保証人にならないのかを尋ねると、彼氏の住民登録が遠方(西日本)なので、店舗を貸し出す不動産会社が難色を示したため、東日本で住民登録をしている女性に白羽の矢がたったようです。
彼氏には一定の収入があり、「絶対に迷惑をかけないし、その旨を書面に残すから」とお願いされているようですが、家賃が月30万円ということもあり、「もし請求がくるようなことがあったら…」と不安なようです。
断ればいいとも思えますが、相談者は、少々強引なところがある彼氏から「別れる」と言われることを心配しています。どうやら、「彼氏との付き合い」と「連帯保証人になること」との間で揺れているようです。
「連帯保証人」については、ドラマなどでもよく耳にします。「なったら危ない」というイメージは定着していますが、実際になった場合、どのような法的リスクがあるのでしょうか。大和幸四郎弁護士に聞きました。
●連帯保証人は、お金を借りた本人と同じ立場
——連帯保証人になるとどうなるのでしょうか。
保証には、単なる保証(単純保証)と連帯保証の2種類が民法上定められていますが、金銭貸借の場合は、ほとんどが連帯保証です。
『保証人』というと、本人が返せない場合に責任を負うと思われていますが、実際は、借り手本人と同一の債務を負うことになります。つまり、本人と保証人は同一の義務を負うのです。
——民法の改正で、2020年4月から保証のルールが変わりましたが、今回のようなケースにも関係ありますか。
今回のケースと関連する改正内容として、事業のために負担する債務について、保証人になることを依頼する側は、(1)自身の財産や収支の状況、(2)そのほかの債務の金額や履行状況などに関する情報を提供しなければならないことになりました。
単なる保証と連帯保証の基本的な義務内容については変更ありません。
——単なる保証と連帯保証は具体的にどう違うのでしょうか。
単なる保証の場合、『催告の抗弁権』といって、主債務者(実際にお金を借りた人)が請求されるまでは、保証人は『払いません』と言えます。
また、主債務者に請求した後でも、『主債務者がこんな財産を持っているから、先に主債務者の財産から執行してください』と言えます。これを『検索の抗弁権』といいます。
一方で、連帯保証の場合には、こうした主張をすることができません。まさに、自分がお金を借りたのと同じ立場に立ってしまうというわけです。債権者は、返済期限を迎えるなど、請求するための条件がそろった場合、いつでも連帯保証人に請求することができるのです。
●最初から自分が支払うくらいの覚悟が必要
——かなりハイリスクなように思えます。
本人が払えなかった場合に自分が代わって支払うという覚悟がないかぎり、連帯保証人にはなるべきではありません。『保証人』というマイルドな言葉で、安易になってはいけません。
多くの場合、借り手は連帯保証人になってもらうために「絶対に迷惑をかけない」などと言います。
——今回のケースもまさにそう言われています。
しかし、このように言われること自体、「迷惑」をかけていると思います。
そして、本人が支払いを怠った場合、連帯保証人に請求がきます。本人が自己破産などをして責任を免れる一方で、連帯保証人が家族や親戚から責められて、命を絶つといった悲劇も少なくありません。
ですから、連帯保証人には絶対にならないほうが無難です。
(弁護士ドットコムライフ)