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プロ野球・達川光男伝説「自費20万円足して年俸2000万円」、税金の金額は変わる?

プロ野球・達川光男伝説「自費20万円足して年俸2000万円」、税金の金額は変わる?

パリーグの史上最速優勝を決めたソフトバンクホークス。その活躍を支えたひとりが、今年から就任した達川光男ヘッドコーチだ。

現役時代の達川ヘッドは、ボールが当たっていないのにデッドボールをアピールするなどの「珍プレー」で有名。しかし、本職の実績も十分で、ゴールデングラブ賞とベストナインをそれぞれ3回受賞するなど、1980年代の広島カープを支えた名捕手だった。

そんな達川ヘッドには、球団が提示した年俸1980万円に対し、自分が20万円を出すからと交渉して、球団初の2000万円捕手になったという逸話がある。

ネットでは、このときの球団側提示額は「税金対策」との説が広がっている。真偽は定かではないが、仮に「税金対策」というのが本当だったとしたら、年俸2000万円と1980万円とで、かかる税金はどのように違うのだろうか。冨田健太郎税理士に聞いた。

●税制上、プラスした20万は必要経費にできる

達川氏と言えば、私が子供のころに活躍していたスター選手であり、よくTVで観戦していました。そんな彼にこういった逸話があるとは知りませんでしたが、税制について確認していきましょう。

そもそもプロ野球選手は個人事業主です。もらった年収等が収入であり、そこから必要経費を控除した金額に対して税金が課せられます。

したがって、今回のケースが事実だったとすると、年俸2000万円を得るために20万円を支出した状況ですので、20万円は必要経費になります。2000万円‐20万円=1980万円となり、もともと年俸1980万円だったケースと税額は何ら変わりないことになります。

つまり、達川氏は1円の損もしないで「2000万円の大台に乗った捕手」という栄誉を手に入れられたことになります。

なお、個人事業主でなく給与所得者の場合はこうはいかず、その20万円は経費になりませんので、「20万円×税率」分の税金を多く支払わないといけません。ご注意下さい。

●手取金額の逆転現象は「誤解」、どのみち達川ヘッドが損することはなかった?

そもそも、年収2000万円の人の手取金額が年収1980万円の人より少なくなるということはありません。「一定の収入になると手取金額が逆転する」というのは、実は完全な勘違いです。

逆転が起こらない理由は「超過累進税率方式」にあります。所得税では、課税される所得金額を7段階に区分し、段階ごとに税率が上がります。ただし、これは次の段階になるとすべての所得に対してその段階の税率が適用されるというものではありません。前の段階を超えた部分に対して、その段階の税率が適用されます。

たとえば、年収300万円だとしたら、そのうち195万円に対して5%、300万円のうち195万円を超えた105万円に対して10%といった具合です。したがって、逆転現象は起きません。この仕組を「超過」累進税率方式といい、超過部分のみ累進的に税率を上げていきますよという方式なんですね。

なお、段階的に税額を計算するのは面倒ですので、該当する段階の税率でいったん税額を計算し、前段階以前の低い税率部分の金額との差額を控除して税額を算定します。これを「控除額」といい、所得税の速算表(https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm{target=_blank})にありますので、ぜひ、試しに計算してみて下さい。

ということで、稼ぎすぎると損をする!ということはありませんので、安心して、稼いで納税しましょう。

【取材協力税理士】

冨田健太郎(とみた・けんたろう)税理士

税理士はお客様にとって「かかりつけ医」のような存在であるべきと考えております。そのため、当事務所ではお客様との対話を最も大切にしております。よく話を伺い、それを踏まえた最善の提案をご理解頂けるまで何度でも説明致します。

事務所名   : 税理士冨田健太郎事務所

事務所URL: http://zeirishiken.com/{target=_blank}

(弁護士ドットコムニュース)

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