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「事故物件ロンダリング」次の次の入居者には告知せず契約…見抜く方法は?
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「事故物件ロンダリング」次の次の入居者には告知せず契約…見抜く方法は?

前の入居者が殺害された、自殺した、孤独死したなどの「事故物件」。心理的にそこに暮らしにくい要因のある物件として認められており、不動産の売買や賃貸の際には、買主や借主への告知義務が発生する。そのため、次の入居者が見つからないことが多く、多くの不動産屋を悩ませていた。

ただ、業界には「告知義務があるのは1人まで」だとして、不動産会社が自社の社員を入居者ということにして、以後は告知をせずに済ませているケースもあるそうだ。また、裁判例でも、「告知しなければいけない入居者は1人目まで」とした判決がある。

入居者としては、知らずに事故物件に住むことに抵抗感を示す人がいるかもしれない。「次の次の入居者」には知らせなくていいのか。ロンダリングを見抜く方法はないのか。瀬戸仲男弁護士に聞いた。

●事故物件は入居率が低下する

事故物件ロンダリングとはどういうものか。

「『事故物件ロンダリング』とは、事故物件をクリーニング(洗浄)して、嫌われない物件に変えてしまおうという行動のことを指します。

そもそもの事故物件とは、自殺、他殺、不審死など忌み嫌われる事件・事故があった物件のことです。これについては、以前『いとうまい子さん兄が自宅で急死、不動産会社から「金払え」と要求…応じる義務は?』(https://www.bengo4.com/c_4/n_5804/)という記事で、私が詳しく解説していますので、ご覧下さい」

なぜ、事故物件ロンダリングが行われるのか。

「まず考えられるのは、事故物件に住むことに抵抗を感じる人が多いので、借り手を探すのが困難になるという点があります。事故物件の部屋の入居者が見つからないだけでなく、その部屋のまわりの部屋の住民も退去する可能性がありますね。入居率の低下は避けられません。

また、入居率が低下すると、収入(利回り)が低下し、借入金がある場合には、将来的に返済が行き詰まるおそれがあります。その結果、仮に、ローン負担に耐えられなくなって、物件を売却しようと考えても、事故物件を買う人は少ないので、買主を見つけることは非常に困難になるでしょう」

●一定期間社員などを住まわせて「ロンダリング」をはかる

具体的にはどういった方法でロンダリングが行われるのか。

「一番多く行われる方法は『サクラを入居させる』という方法です。宅建業者の中には『事故が起きた後、一度でも次の入居者が入居すれば、そのまた次の入居者に対して、事故物件であることを説明しなくても、宅建業法上の重要事項説明義務に違反しない』と考えている業者がいるようです。そこで、このような業者は、自社の社員やアルバイト学生などを使って一定期間だけ事故物件に入居させて、クリーニングしようとするわけです。

あるいは、借地借家法の『定期借家契約』も事故物件をクリーニングする方法として利用されることがあります。事故物件であることを説明したうえで借主を募集した場合、低家賃でなければ借主はほとんど現れません」

定期借家契約によるクリーニングとはどのようなやり方なのか。

「ただ低家賃の借主を普通借家契約で入居させたのでは、大きな損失が生ずる恐れがあります。そこで、低家賃の借主を定期借家契約で募集し、1年程度で退去してもらい、その後は相場通りの家賃で普通借家契約を締結するわけです。

その他には、定期借家契約と似たような方法で、マンスリー契約やウィークリー契約で貸し出してクリーニングした上で、普通借家契約に戻す方法も行われているようです。今後、いま話題の『民泊』も事故物件ロンダリングの手法として利用されるかもしれませんね」

●悪質であれば宅建業法上の罰則を科される

こういった事故物件ロンダリングに対する法的規制はないのか。

「宅地建物取引業法(宅建業法)の規定によって、宅地建物取引業者(宅建業者)は、物件についての説明義務を課されています。これを『重要事項説明義務』と言います。

買主・借主は、物件において人が異常死したという事実について大いに気になるものです。このような人の気持ちに影響を与えるマイナスの要素を『心理的瑕疵』と言います。この心理的瑕疵についても、重要事項説明書で説明すべきであるとされています。

仮に、宅建業者がこの説明義務に違反して、事故物件であることを説明せずに業務を行った場合、宅建業法違反となり、免許停止や、悪質であれば宅建業法上の罰則を科されることにもなりかねません。

また、説明義務違反が重大である場合、例えば、事故の内容(自殺なのか、他殺なのか。他殺の場合、被害者の人数は、殺害方法は残忍なものかなど)、物件の規模、用途、金額などによっては、単に宅建業法違反という行政法規違反に問われるだけでなく、刑事法規(刑法上の詐欺罪<不作為による欺もう行為>など)にも問われる可能性がありそうです」

●リフォームの跡に注意しながら現地を確認しよう

購入者や借り主が、事故物件ロンダリングを見抜く方法はあるのか。

「なかなか難しい問題ですが、いくつか考えてみましょう。まずは事故物件を集めて表示してくれているWEBサイトがあります。利用して検索してみると良いでしょう。

また、不動産を買うときは、必ず現地を見て、確認しましょう。その際に、リフォームの跡に注意しましょう。マンションなどの集合住宅で、1室だけがリフォームされていたら、怪しいですね。この場合、考えられるのは、その1室で過去に火事があった場合や、強盗などが押し入って逃げまどう家人数人を殺害し、あちらこちらの部屋に血が飛び散って、室内全体のクロスを張り替えざるを得なくなった場合などがありえます。

逆に、1室の中で、特定の場所(寝室、風呂場など)だけがリフォームされている場合には、その場所が殺人の現場だった可能性がありますので、要注意です。いずれにしても、他の居室と違うリフォームの状態である場合には、十分注意して、家主、業者、周りの住民などに、遠慮せずに質問してみましょう。

最後に、マンション名などを変えた建物も要注意です。事故が起きたマンションでは、悪いイメージを払拭するために、館名を変更することもありえます。マンション名を変えれば、ネット上の検索にかからなくなることもあります。マンション名の変更と共に、外壁を明るい色に塗り替えれば、悪いイメージを一掃することができると考えるかもしれません」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

瀬戸 仲男
瀬戸 仲男(せと なかお)弁護士 アルティ法律事務所
アルティ法律事務所代表弁護士。大学卒業後、不動産会社営業勤務。弁護士に転身後、不動産・建築・相続その他様々な案件に精力的に取り組む。我が日本国の歴史・伝統・文化をこよなく愛する下町生まれの江戸っ子。

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