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国税局の調査官が「風俗店」に客として潜入するケースも・・・「所得隠し」調査の裏側
税金を低く抑えたい気持ちはわかるが、脱税は犯罪である

国税局の調査官が「風俗店」に客として潜入するケースも・・・「所得隠し」調査の裏側

裏帳簿の作成、売り上げ集計の改ざん・・・。岐阜市の歓楽街「金津園」の風俗店40店が総額約15億円の所得隠しを名古屋国税局に指摘された。さまざまな手段を駆使して、所得を低く見せかけていたようだ。

報道によると、風俗店では、女性従業員のサービス料を、実際よりも安くして売り上げを意図的に減らしていた。さらに、女性従業員からタオル代の名目で集めた雑費や遅刻の罰金も、売り上げに計上していなかった。国税局が税務調査に入った際に、税務申告用と店舗経営用の「二重帳簿」が裁断されているのが見つかったという。

今回の税務調査では、店の名簿から退職した従業員を割り出し、当時の手帳の記述や聞き取り調査を重ねることで実態をつかんだという。一般的に、国税局や税務署は、どんなやり方で調査をしているのだろうか。風俗業の税務を専門的に扱っている松本崇宏税理士に聞いた。

●「税務申告」をしていない風俗店も多い

そもそも所得隠しとは、どういったことなのだろうか。松本税理士が解説する。

「『所得隠し』とは脱税の手法の一つで、実際の所得よりも低く申告することで、所得税や法人税の納税額を抑えることを意味しています」

風俗店は小規模事業者が多いが、税務申告を行っているのだろうか。

「風俗店は警察に営業許可等の届出をしていても、税務の申告をしていない店舗が多く存在します。また、届出上の店舗の代表者が雇われ店長で、実質の経営者が他にいる店舗も多く存在します」

無申告が多いのであれば、実態をつかむことは難しそうだ。国税局や税務署はどのようにして調査しているのだろうか。

「『所得隠し』が疑われる店舗には、国税局の調査官が自ら客として入店し、女性従業員から言葉巧みに売上や報酬、経営者にまつわる情報などを聞き出します。そこで、お店の実態を把握して、申告内容と乖離している部分があれば、今度は調査官であることを名乗って、調査を行うこともあります」

客として入店するケースもあるというのは、興味深い。

●ウェブサイトや店内の掲示物からも情報収集

さらに、「所得隠し」の手法について、松本税理士はこう説明する。

「売上そのものを低く見せかけることや、架空の報酬を計上して、利益を低く抑えるということもあります。さらには、売上を操作するだけでは利益率が変動してしまうため、売上と報酬の両方を操作することもあります」

あの手この手で「所得隠し」をしても、調査官の目は厳しい。

「伝票や帳簿などの資料を破棄していたとしても、経営者の生活実態からどれだけの利益が出ていたかを推計して、その利益に対する税金を徴収することが可能です。また、従業員への報酬と売上の比率や、タオル代などの費用からの逆算を行うなど、つじつまが合わない点をもとに発覚するケースが多いです。

国税局は店舗のサイトで得られる情報や、実際に店舗を訪れた際の会話や掲示物などに注目し、ささいな情報も逃さずに収集しているため、『無申告』を含めた大半の脱税を発見できます」

そんなところまで見ているのか、という細かい情報の中にも、脱税のヒントはあるようだ。店側はごまかしたつもりでも、ふとしたことからバレてしまうのかもしれない。

【取材協力税理士】

松本崇宏(まつもと・たかひろ)税理士

昭和53年1月、東京都葛飾区出身。明海大学卒業。税理士事務所、法律特許事務所の勤務を経て、平成16年11月税理士試験合格、松本税務会計事務所開業。「デリヘルはなぜ儲かるのか」(小学館文庫)の出版を機に日本で唯一、風俗業種に特化した税理士事務所。東京税理士会所属。

事務所名:松本税務会計事務所

事務所URL:http://www.deri-tax.com/

(税理士ドットコムトピックス)

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