酒気帯び運転で物損事故を起こしたとして、懲戒免職された静岡県焼津市の公立小学校の元教諭が処分取り消しを求めた裁判で、静岡地裁(平山馨裁判長)は3月6日、原告が花粉症薬やアルコールの影響などで「せん妄」状態だったと認定し、処分取り消しを命じる判決を言い渡した。
●同僚と飲酒→代行業者に自宅近くまで送ってもらう→その後に事故が発生
判決によると、原告の元教諭は2017年3月、静岡県内の飲食店で同僚と飲酒したのち、運転代行に自宅近くの駐車場まで送ってもらった。その後、自分で自動車を運転した際に民家のブロック塀と電柱に衝突する事故を起こした。
県教委は2019年8月、懲戒免職の処分を下したが、元教諭は2023年9月、処分は裁量を逸脱・濫用した違法なものだとして、処分取り消しを求める裁判を起こした。
運転当時、花粉症の薬(アレルギー専用鼻炎薬:フェキソフェナジン)などの服用を原因として、せん妄による認識障害や記憶障害があり、自分がアルコールを摂取したことを認識できない状態だったと主張。酒気帯び運転の認識を欠いており、懲戒処分の要件を満たしていないなどとうったえていた。
●裁判所「元教諭は運転当時、せん妄状態だった」と認定
静岡地裁は、専門医の診断結果などから、元教諭が運転当時、せん妄に陥り、事理弁識能力(自分の行いが悪いことかどうかを認識・理解する能力)を欠く状態で運転に及んだと認めた。
そのうえで、元教諭がそのような状況にあった点について、県教委が考慮せず、一般的な酒気帯び運転と同じように捉えて処分したと指摘。せん妄だったかどうかは、処分する場合の判断に影響を及ぼす重大な考慮事項だったといえるとした。
そのうえで「元教諭に対する処分は、考慮すべき事項を考慮に入れないままされたものとして、裁量権を逸脱しまたは濫用した違法があるというべき」として、処分を取り消したうえで、改めて県教委の判断に委ねるのが相当だとする判断を示した。
●元教諭側は「県が控訴せず速やかに確定することを望む」
原告代理人は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「科学的であり、極めて妥当な判決だと思います。静岡県はこれまでも有効な反論は何もしておらず、控訴せずに速やかに確定することを望みます」とコメントした。