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怒られているのにふざける子どもは「お母さんに笑ってほしい」から<体罰・虐待防止シンポ>
左から森保道弁護士、瀬角南氏、西澤晢教授

怒られているのにふざける子どもは「お母さんに笑ってほしい」から<体罰・虐待防止シンポ>

日本弁護士連合会は8月28日、体罰や虐待問題についてのシンポジウム「禁止立法で体罰・虐待の予防を!~科学的に明らかになってきた体罰の弊害と効果的施策~」を、東京・千代田区の日比谷コンベンションホールで開催した。

児童虐待に詳しい西澤晢教授(山梨県立大学人間福祉学部・福祉コミュニティ学科)や、瀬角南氏(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)、森保道弁護士(日弁連子どもの権利委員会幹事)が登壇し、「子どもを人として尊重すべき」「体罰の法的禁止は必要」と訴えた。

●体罰を受けた子どもたち、不快感を吹き飛ばすために自傷行為

西澤教授は、体罰によって子どもが受ける影響について説明した。「繰り返し体罰を受けた子どもは痛みや苦痛に慣れてしまい、『痛い』『苦しい』という感覚がなくなります。すると、子どもは人の痛みが分からなくなってしまうのです」

また、体罰を受けた子どもはセルフコントロールがうまくいかず、不快感を吹き飛ばすために自傷行為などに走ることがある。体罰を受け、児童養護施設に入所した子どもたちは、自傷をすると「落ち着く」「スカッとする」のだという。

このように体罰が子どもに悪影響を及ぼすことは、国内外における多くの研究によって明らかにされている。西澤教授は、「子どものころに暴力などの身体的虐待を受けた人は『体罰は必要なものだ』という価値観が植えつけられてしまいます。そのため、大人になったときに自分の子どもに対して虐待をおこなってしまうのです」と、虐待の世代間連鎖が起こるリスクが極めて高いことを指摘した。

また、「子どもを理解すれば体罰は起きないはず」と力説。「どうしてあなたは怒られているのにふざけるの!」と怒られた子どもの話によくよく耳を傾けると、子どもは「怒っているお母さんの顔はこわい。お母さんに笑ってほしいからだよ」と答えるのだという。

●約6割の親が、子どもに対する体罰を容認している

瀬角氏は、インターネット調査の結果、約6割の大人が子どもに対するしつけのための体罰を容認していることを報告した。調査は、全国20歳以上の男女2万人(うち子育て中の男女1万人)に対しておこなった。しつけのために子どもに体罰をすることや、子どもをたたくことについて、「決してすべきではない」と回答したのは約4割にとどまった。

一方で、子育て中の約6割が、体罰等によらずに子育てをしたいが実践は難しい、あるいはそのような子育て方法を知りたい、と考えていることもわかったという。

瀬角氏は「体罰は子育て中の人だけの問題ではありません。広く啓発活動を推進していきたい」と話した。また、体罰を法律で禁止するとともに、「体罰等によらない子育て方法を学び、実践するための支援を拡充すべき」と提言した。

「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」では体罰等によらない子育て方法を学ぶためのプログラム「ポジティブ・ディシプリン」を実施している。2015年から2018年3月までに15プログラムを実施し、212名が参加した。アンケートに答えた91人の受講者のうち、88.6%が「プログラムが体罰の使用を減らすことに役立った」と回答したという。

●「体罰禁止法」諸外国で効果あり

森弁護士は「体罰は子どもに対する許されない人権侵害です」と体罰を法律で禁止する必要性を訴えるとともに、実際に体罰を法で禁止している諸外国では高い効果があらわれていることを報告した。

世界保健機構(WHO)は、2016年に科学的根拠のある政策として、体罰の「法的禁止」を提唱している。世界ではじめて体罰禁止法を規定したスウェーデンでは、1979年の法制化以降、体罰の使用や体罰に対する肯定的態度が激減した。同様に、ドイツでは体罰はもちろん、少年非行も減ったという。現在では、法的に体罰を全面禁止した国は53カ国あり、57カ国が法的に全面禁止することを表明している。

森弁護士は「体罰を減らすためには、法による禁止と啓発の両方が必要です」と話した。啓発だけでは法的禁止よりも効果が低く、法的禁止も啓発を伴わなければ十分な効果を期待できないのだという。「結愛さん虐待死のような事件は2度と起きてはなりません。体罰を法で禁止することで、子どもたちに安全・安心を」と訴えた。

(弁護士ドットコムニュース)

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