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「景品」を買い取ったパチンコ店の経営者逮捕、なにがアウトだったのか?
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「景品」を買い取ったパチンコ店の経営者逮捕、なにがアウトだったのか?

いったん客に提供した「特殊景品」を買い取ったとして、福岡県中間市のパチンコ店経営の男性が風営法違反(自家買いの禁止)の疑いで逮捕された。

西日本新聞によると、男性は今年6月下旬、客が店で獲得したメダルと引き換えに提供した特殊景品を、同店敷地内に設置した「賞品買取所」で、従業員をつかって買い取った疑いが持たれている。

パチンコ店の中には、賞品買取所が敷地内に併設されているところも少なくない。なぜ今回、違法と考えられるのだろうか。大山滋郎弁護士に聞いた。

●三店方式とは?

「今回の事件は、『子供店長』が、大人のルールを『王様は裸だ!』と言って破り、それに対して警察がお灸を据えたものです」

大山弁護士はそう指摘する。大人のルールとは、どういうものだろうか。

「パチンコでは、『三店方式』というシステムで景品を現金化しています。パチンコ屋の営業者、景品問屋、そして景品交換所という独立した『三店』で構成されています。

客は獲得したメダルの数に応じて、パチンコ屋の営業者から景品がもらえます。パチンコは賭博ではないという建前を守るために、勝った場合もお金は貰えないことになっているのです。でも、ほとんどの客が景品交換所に商品を持参して換金(売却)しています。

風営法では、パチンコ屋の営業者が客に現金を提供することや、景品を買い取ることを禁止しています。一方で、パチンコ屋の営業者以外の第三者が、客に提供した賞品を買い取ることについては、直ちに違法であるとしているわけではありません。

そのため、パチンコホール営業者が景品交換所を運営しているなど実質的に買取に関与している場合には、摘発の対象となっているのです」

今回の事例は、なぜ逮捕されたのか。

「今回は、パチンコ店敷地内に設置した賞品買取所で、特殊景品5枚を従業員を使って1800円で買い取ったということで、風営法違反容疑で逮捕されています。

ただ、三店方式だからといって、ギャンブルではないという理屈は果たして成立するのでしょうか。パチンコが明らかなギャンブルだなんて、大人はみんな知っています。現在、日本でもカジノを認めるかなんて議論されていますが、パチンコほど目立つところに平然とある『賭博場』を黙認している国は日本くらいです。それでいて、今更何なんだよと、多くの人は呆れてるでしょう。

パチンコ店自身が換金するのは禁止されているので、三店方式で換金させているわけです。『バカバカしいし、偽善だ!』とみんな知っています。でも、そのルールを守るのが大人です。今回逮捕された会社代表取締役の男性は、それを破ってしまったということです」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

大山 滋郎
大山 滋郎(おおやま じろう)弁護士 弁護士法人横浜パートナー法律事務所
刑事弁護と企業法務が得意分野。メーカーの法務部門に長く勤め、勤務のかたわらニューヨーク州弁護士資格を取得し、日本の司法試験にも合格した。会社の法律問題を扱う一方、多数の刑事事件を手がける。

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