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パチンコ景品を「現金化」する仕組み「三店方式」にはどのような問題があるか?
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パチンコ景品を「現金化」する仕組み「三店方式」にはどのような問題があるか?

パチンコ店の客から景品を買い取ったとして、パチンコ店運営会社の社長ら3人が11月中旬、風営法違反(賞品買い取り)の疑いで北海道警に逮捕された。

産経新聞によると、社長らは今年9月と10月、札幌市内にあるパチンコ店の客2人からそれぞれ、3200円と5400円で景品を買い取った疑いが持たれている。道警は、店外の景品交換所が実質的にパチンコ店運営会社と一体だったとみているという。

一般的に、パチンコ店では出玉に応じて、タバコや食品など景品がもらえる仕組みだ。だが、店外の景品交換所で現金と交換する人も多いだろう。今回のケースは、なぜ摘発されたのだろうか。どのような仕組みが求められているのか。風営法にくわしい津田岳宏弁護士に聞いた。

●現金との交換を可能にする「三店方式」

「法律上、パチンコ店は、現金を賞品として提供することが禁じられています(風営法23条1号)。現金の提供を認めると、パチンコが刑法で禁止されている『賭博』に該当してしまうからです。

またパチンコ店が、客に提供した賞品(景品)を買い取ることも禁じられています(同法23条1項2号)。買い取り行為は、実質的に現金を提供しているのと同じだからです」

しかし、実際には、客が現金を手に入れているのではないだろうか。

「そうですね。パチンコをする人のほとんどは、出玉を『特殊景品』と呼ばれる景品に交換します。そして、その特殊景品を店のすぐそばにある交換所で現金に交換、つまり買い取ってもらっています。

交換所は、買い取った特殊景品を景品問屋に売り、景品問屋は、その特殊景品をパチンコ店に売ります。このように特殊景品がグルグル回って客に現金を提供するシステムは、俗に『三店方式』と呼ばれています」

この「三店方式」は法律に違反しないのか。

「今のところ、三店方式を違法だとする判例はありません。

しかし、風営法の趣旨からすれば、直接買い取ろうが、三店方式にしようが、実質的に客に現金を提供することは変わりないので、『三店方式は違法ではないか』という問題が生じます。実際、『三店方式は風営法に違反する』という見解を示す刑法学者もいます」

●換金を合法化し、別のかたちの規制を導入すべき

三店方式には、法的にグレーな側面もあるようだ。どうして「暗黙のルール」のようになってしまっているのだろうか。

「今さら違法にすると、混乱が生じるおそれがあります。パチンコ店の従業員だけで全国で数十万人に達するとされており、周辺企業も含めれば影響を受ける労働者はもっと多いでしょう。多数の失業者が出るおそれがあります。

だからといって、グレーなままで存在するのはよくありません。東京オリンピックで多数の外国人が訪れ、もしパチンコ店について聞かれたとき、胸を張って説明することはできません」

グレーな部分を解消する方法はないのだろうか。

「個人的には、パチンコ換金そのものを合法化し、そのかわりに厳格な法規制を導入するのが良いと思います。たとえば、徹底した依存症対策の義務付けや、未成年入場への厳罰化、会計透明化および外部監査の義務付け、脱税行為の厳罰化などです。

また、あまり知られていない話ですが、三店方式は、身障者や未亡人の福祉事業協会が交換業務をおこなって、社会的弱者の雇用促進に貢献したシステムがもとになっています。社会福祉活動の義務付けも良いかもしれません」

津田弁護士はこのように提案していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

津田 岳宏
津田 岳宏(つだ たかひろ)弁護士 京都グリーン法律事務所
京都弁護士会。京都大学経済学部卒業。著書に「カラマーゾフを殺したのは誰か?世界の名作でリーガルマインドを学ぶ」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)「弁護士には聞きにくいー知って助かる!法律相談」(青春出版社)、「賭けマージャンはいくらから捕まるのか」(遊タイム出版)など 賭博法改正を願う弁護士津田岳宏のブログ  http://tsuda-moni.cocolog-nifty.com/

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