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巨人・阿部慎之助監督の暴行事件、児相・警察の迅速対応も「長女」に批判の声…児童虐待の専門家に聞く
5月26日のスポーツ新聞各紙の1面(加工は編集部)

巨人・阿部慎之助監督の暴行事件、児相・警察の迅速対応も「長女」に批判の声…児童虐待の専門家に聞く

自宅で高校生の長女(18)の襟元をつかみ、投げ飛ばして倒すなどしたとして、プロ野球・読売ジャイアンツの阿部慎之助監督(47)が暴行容疑で現行犯逮捕された。阿部氏は釈放後の5月26日、会見を開き、監督辞任を表明した。

阿部氏は会見冒頭、「私の家族のトラブルで、多くの野球ファンの方、プロ野球関係者の方、会社に多大なご心配とご迷惑をかけました。巨人軍という監督の名を汚してしまってとても深く謝罪したい気持ちでいっぱいでございます」と謝罪した。

一方で、長女や家族に対する直接的な謝罪の言葉はなく、「娘も高校3年生という年頃な子ですので、どうか皆さま見守っていただければ幸いです」と配慮を求めた。

会見では長女の手紙も代読された。長女はその中で「殴る蹴るといった事実はない」「父との大掛かりな喧嘩は初めて」「仲直りした」などと説明している。

また、生成AI「ChatGPT」に相談したところ、「匿名で相談できる児童相談所がある」という回答に沿って行動したと明かした。

「『どうしたらいいか』といった私自身の意向が聞かれることはなく、警察に通報されるという形になってしまいました。警察が来て一番驚いているのは自分自身です」と困惑した体験についても語っている。

シーズン中にプロ野球の監督が逮捕され、辞任に至るのは極めて異例だ。突然の事態を受け、ネットやSNSでは、長女が児童相談所に連絡したこと自体を批判する声も上がっている。

児童虐待事件にくわしい飛田桂弁護士は「親から子どもへの暴力が、きちんと第三者に対する暴力と同等に受け止める力を全国民が持つことが求められています」と指摘する。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

●暴行罪や「心理的虐待」に該当する可能性

── 阿部氏の行為は、一般的に暴行罪やDVにあたるのでしょうか。報道によると、妻と15歳の次女も現場を目撃していたとされています。

報道されている範囲でいえば、襟元をつかみ、投げ飛ばして倒すという行為は、長女に対する暴行罪にあたります。

さらに、その様子を15歳の次女が目撃していたのであれば、次女に対する「心理的虐待」(児童虐待防止法2条4号の心理的虐待)に該当します。

なお、暴行罪は親告罪ではないため、被害者本人が「処罰を望まない」としても、事件として処理される可能性があります。

●18歳以上でも児相が動くことも

──長女は18歳ですが、児童相談所は対応できるのでしょうか。

児童相談所は原則として18歳未満の子どもを対象にしています。そのため、18歳以上の場合は、児相が積極的に介入しないことも多いです。

ただし、公務員には、犯罪を知覚した場合に警察に通報をすることが求められます。また、今回のような未成年のきょうだいが同居している場合には、その子への心理的虐待の可能性も含め、家族全体への支援や調整が必要になることもあると思います。

●「子どもに関する相談窓口を一元化すべき」

──長女はAIの助言を受けて、警察ではなく児童相談所に相談したそうです。この行動をどう思いますか。

本来、子どもの安全に関する通報・通告窓口が、一元化されていないこと自体が大きな問題です。

今回のように刑事事件化する可能性があるケースでは、結果的には、警察への通報のほうが迅速かつ強い対応につながります。ただし、子どもにとって、いきなり警察に連絡することは心理的ハードルが高い。

その点、児童相談所は子どもからのSOSに慣れており、比較的アクセスしやすい存在です。今回は、児相が迅速に対応したことで、深刻化を防ぐことにつながったと思います。

今後は、子どもに関する相談窓口をよりわかりやすく、一元化していく必要があるでしょう。

●「児童相談所や警察は適切に対応した」

──SNSでは、「過去にも児相相談歴があったのでは」といった憶測もみられました。

今回報じられている行為態様であれば、たとえ過去の相談歴がなかったとしても、公務員として警察に通報するのは通常です。むしろ、それが児童相談所に期待される役割でもあります。

──今回のケースをどう受け止めていますか。

海外でも、自分の子どもへの暴力は、第三者に対する暴力よりも軽く受け止められがちな傾向があります。その中で、児童相談所や警察が、家庭内の暴力であっても第三者に対する暴力と同等に対応したことは、素晴らしかったと思います。

一方で、SNSでは「対応が過剰だ」といった反応や、長女に対する批判もあったと聞いています。

しかし、日本でも、親から子どもへの暴力を「家庭内のこと」と矮小化せず、きちんと第三者に対する暴力と同じように受け止める視点が求められています。

また、公的に家庭をサポートする資源が十分ではありません。家庭内の問題も、社会全体でサポートする体制が整備されることが望まれます。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

飛田 桂
飛田 桂(ひだ けい)弁護士 飛田桂法律事務所
特例NPO法人子ども支援センターつなっぐ代表理事であり、司法面接者でもある。神奈川県弁護士会に所属し、児童相談所の非常勤弁護士、いじめ第三者委員会を歴任するなど、子どもに関する法律関係を専門とする。

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