富士山の登山道で、岩などに落書きされているのが見つかったと報じられている。
テレビ朝日によると、白い塗料による矢印の落書きが11月7日までに富士宮ルートの6合目から8合目にかけて、合わせて150カ所で見つかったという。
富士山では2017年にも、本来の登山ルートと違う方向を指す矢印の落書きが見つかっていた。
わざと他人の所有物に落書きするような場合は「器物破損」などの犯罪が成立する。富士山の登山道で落書きする行為はどのような責任を問われるのだろうか。浅井耀介弁護士に聞いた。
●富士山は「史跡名勝天然記念物」に指定されている
富士山は、文化財保護法の「史跡名勝天然記念物」に指定されており、我が国にとって、歴史上または学術上、価値の高いものであるとして、法律上の保護の対象とされています。
そして、史跡名勝天然記念物の現状を変更したり、その保存に影響を及ぼす行為で、「滅失し、毀損し、または衰亡する」に至らしめた場合、5年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金で処分されるとされています(同196条)。
富士山の登山道にある岩などに落書きする行為は、史跡名勝天然記念物の現状を変更して、これを「毀損」することに他ならず、落書きをした人は、文化財保護法違反を問われることになるでしょう。
たとえば、最近でも、富士山と同じように「史跡名勝天然記念物」に指定されている沖縄県の浦添城跡に落書きした人が、文化財保護法違反で逮捕された事例もあります。
●登山道の岩に落書きすることに潜むさらなる危険
今回問題となっているケースのように、登山道に矢印の落書きをした場合には、登山者がその矢印に従ってしまう可能性も考えなければいけません。
矢印が示す道が正しいルートであればまだよいのですが、もしも矢印が示す先が危険性のあるルートだった場合、そしてその矢印に従ってしまった登山者がケガをしたり、最悪死に至る事故につながった場合、矢印の落書きをした人には、過失致死傷罪が成立する可能性もあります。
以上を踏まえて、景観維持という観点だけでなく、登山者の安全を守るという観点からも、岩などに勝手に矢印の落書きをするような行為は控えるべきだといえます。