実の娘に性的暴行を加えたとして、準強制性交の罪に問われた男性に対し、京都地裁は7月22日、懲役20年(求刑:懲役30年)の有罪判決を言い渡した。
京都新聞(7月22日)によると、男性は2018年3月から翌年3月までの間に、当時20代の娘に繰り返し要求するなどして拒絶することを著しく困難な状態にさせ、自宅で計54回もの性的暴行に及んだという。
弁護側は公判で被告が反省しているとして執行猶予付き判決を求めていたようだが、判決は「同種事案で類例を見ないほど多数で、悪質性が高い」と判断。男性が娘に対して幼少の頃から暴力を加え、約10年にわたり性的虐待を繰り返していたことも指摘したという。
ネットでは、事件に対する意見だけでなく、「悪質性が高いのに求刑以下というのは釈然としない」「懲役20年はあまりにも軽すぎる判決」など、判決で下された量刑に対する批判が多数あった。
計54回もの性的暴行が判決で認定されたことに驚く声もあったが、今回の犯行に対して懲役20年という量刑判断はどのように評価されるべきなのか。元検事の西山晴基弁護士に聞いた。
●評価を気にした?量刑相場の下限ギリギリだった「懲役20年」
──54回の犯行が認定されたようです。
親が子に対して性加害を繰り返した事案において、54回もの犯行を認定できた判決は異例です。
通常、この手の事案では、犯行日時などを特定できる証拠が乏しく、実際に処罰対象にできるのは数回の犯行にとどまってしまうことが多いためです。
今回の判決では、被告人が犯行を撮影していたことから、その撮影データが証拠となり、犯行日時などを特定できたといった事情があったのかもしれません。
──懲役30年の求刑に対し、判決は懲役20年でした。ネットでは「軽すぎる」「なぜ10年も減刑したのか」といった声があります。
同様の事案では、2~3回の性加害でも懲役10年前後の判決が出ています。
今回の判決は懲役20年でしたが、わずか1年の間に54回と桁違いの回数の性加害が繰り返された事案であることを考えると、十分な刑罰とは言えません。
検察官は法定刑上限の懲役30年を求刑していましたが、裁判官に10年も減刑する明確な理由があったのかも疑問です。
裁判官の中には、検察官から控訴されないように判決を出す方もいます。検察官から控訴されるかどうかは、裁判官の評価に影響を与える可能性があるからです。
求刑が10年を超える重い事件では、求刑の3分の2を下回る判決かどうかが、検察庁内で控訴を検討する際の基準の一つとなっています。今回の判決は、まさに懲役30年の3分の2を下回らないギリギリの判決でした。
過去の量刑相場が当てはまらない異例の事案において、裁判官が、重すぎず、軽すぎない判決を出そうと考えたところ、検察官から控訴されないギリギリのラインを目安にして判決を出した可能性はあります。