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高野隆弁護士「公判前整理手続きはクソ。もっと裁判官に怒れ」、刑事弁護のレジェンド勢ぞろい
対談する(左から)神山氏、後藤氏、高野氏(2023年4月21日、弁護士会館、弁護士ドットコム撮影)

高野隆弁護士「公判前整理手続きはクソ。もっと裁判官に怒れ」、刑事弁護のレジェンド勢ぞろい

冤罪の可能性がある事件を担当する弁護人に対して、資金の支援やアドバイスをする「先端的弁護による冤罪防止プロジェクト」の発足記念シンポジウムが4月21日、東京・霞が関の弁護士会館で行われた。オンライン含め約170人が参加した。

「三大刑事弁護人」といわれる後藤貞人氏、高野隆氏、神山啓史氏が1時間超にわたって、現在の刑事手続きについて対談。もっと警察や裁判官、検事と戦ってほしいと若い弁護士にエールを送った。

高野氏は公判前整理手続きを「クソ」と断じた上で「裁判官のやりやすいように弁護士が餌食にされている。机に六法叩きつけて去るくらいやって、もっと怒ってほしい」と吠えた。

●「全国の若手が実践を重ねることが必要だ」

高野氏と共に1995年、取り調べへの弁護人立ち会いや黙秘権の行使を求めるミランダの会を設立した神山氏は「原則黙秘が基本になってきた」と評価した上で、取り調べ拒否に向けても若手弁護士が全国津々浦々で実践していくことに意味があると指摘した。

高野氏も「取り調べのために身柄拘束するということがいまだにある。それを打破するためにルーティーンで取り調べ拒否しないとだめだ」と話した。

また、裁判員裁判の公判前手続きについては議論が白熱した。高野氏は「本来の目的は迅速化と充実化だったはずだが、そうなっていない。裁判官が判決文が書ける状態にもっていくだけの役人の利益最優先だ。クソな仕組みを延々と維持してはいけない」と息巻いた。

後藤氏も自らの弁護方針によっては「弁護人は木で鼻をくくったような対応をしていい」と援護。裁判官の質問に「今は言えない」「わかりません」と答えることもアリだとした。神山氏も「裁判所の質問待ちの姿勢ではなく、弁護人から口火を切ってほしい」と注文した。

●「資金支援のおかげで充実した弁護活動ができる」

同プロジェクトは2022年8月に財団法人化し、本格的な支援を開始した。12人の著名弁護士がサポートし、これまで無罪判決2件と一審破棄の差し戻し判決1件の実績がある。

虐待の傷害致死罪に問われた父親と、傷害の罪に問われた保育士の無罪判決を勝ち取った大阪の川上博之弁護士は医師鑑定費用の支援を受けて、専門的な見地から十分な立証ができたと説明。「いずれも弁護人がやらなければ、事実がゆがんでしまう可能性があった。費用の点で断念するということだけはあってはならない」と強調した。

また、資金支援と秋田真志弁護士のサポートを受け、保育士の傷害致死事件を担当している神奈川県の小林雄一郎弁護士も登壇した。現在は公判前整理手続き中だが「充実した弁護活動ができている。きちんと無罪を取って報告したい」と意気込みを語った。

●レジェンドからのメッセージ

日本の刑事弁護を率いてきた3氏がこの日、若手へ送ったメッセージは、以下の通り。

「(保釈請求や黙秘権の行使が)この事件で必要なんだと弁護士が確信をもっているか。実践を重ね、自分の腑に落ちていかないと力にならない。腑に落ちるまでやってください」(神山氏)

「法廷技術を磨きましょう。無罪の山を築きましょう」(後藤氏)

「直面する全ての問題はほぼお金によって解決できる。その手段を得られる。天国のような時代です。(刑事弁護を志す)限られた人たちでこの天国を楽しみましょう」(高野氏)

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