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性暴力「被害」を認識するまで平均7年半、立ちはだかる時効の壁 5899人へのアンケート調査で明らかに
集会で調査結果が報告された(2020年11月20日、東京都、弁護士ドットコム撮影)

性暴力「被害」を認識するまで平均7年半、立ちはだかる時効の壁 5899人へのアンケート調査で明らかに

性暴力を受け、自ら「被害」と認識するまでにかかった年数は、平均7.4年——。

性暴力被害者が自分の身に起きたことを「被害」だと認識するまで長い時間がかかることが、性被害の当事者団体によるアンケート調査で明らかになった。

今の法律では、強制性交等罪の公訴時効は10年、強制わいせつ罪は7年となっている。公訴時効を過ぎると起訴、処罰ができなくなる。

団体は11月20日、被害者がいつでも被害を届け出ることができるように、公訴時効の撤廃または見直しを求める要望書を内閣府に提出した。要望書で公訴時効の撤廃または見直しを求めた 要望書で公訴時効の撤廃または見直しを求めた

●警察に相談した人は16%

アンケートは2020年8月16日から9月5日までウェブでおこない、性暴力被害者らで作る一般社団法人「Spring」のSNSやメーリングリストで告知をした。5899人の回答を分析対象とした。

「挿入を伴う被害」にあった人で、被害後すぐに「被害」だと認識できなかった人は6割におよび、被害の認識までにかかる年数は平均7.4年だった。そのうち、被害時の年齢が6歳までの人は、被害認識するまでに11年以上かかったという人が43%だった。

7歳以上20代未満は10~20%、20代は8.79%、30代は4.17%の人が被害認識するまでに11年以上かかったと回答した。

また、「挿入を伴う被害」にあった人で、身近な人に被害を打ち明けた人は63.5%で、初めて被害を打ち明けるまでの年数は平均6.5年だった。

警察に相談したことがある人の割合はもっと少なく、「挿入を伴う被害」にあった人で16.3%だった。

●被害を訴えても安心して支援につながる社会を

調査結果は、回答時点で被害だと認識している当事者のデータとなる。調査グループは「実際には、より長期にわたり認識できないままでいたり、相談や被害の届出ができないままの被害者が想定できる」としている。

なぜ、被害認識まで時間がかかるのだろうか。アンケート調査に協力した臨床心理士・公認心理師の齋藤梓さんは「子どもの頃に被害を受けた回答者がとても多かったが、子どもは性的なことだという認識もできない。また、見知った人からの被害も多く、『見知らぬ人にある日突然路上で被害にあう』という性暴力のイメージと合致せず、被害という認識が遅れたということもあると思う」と話した。

「Spring」代表の山本潤さんは「加害者に時効があっても、被害者の傷には時効がない。性暴力被害を受けた方々が伝えてくれた5899件もの声を受け止め、被害者に優しく、被害を訴えても安心して支援につながると期待できる社会になるよう願っています」と話した。

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