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少年法適用年齢引き下げ、日弁連が反対声明「現行法は有効に機能している」
中本和洋会長

少年法適用年齢引き下げ、日弁連が反対声明「現行法は有効に機能している」

日本弁護士連合会(日弁連)は12月22日、法務省が少年法の保護の対象年齢などについて議論する勉強会の報告書を公表したことを受けて、少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明を発表した。

法務省の報告書は、対象年齢を引き下げについて、「18歳、19歳が立ち直るためにきめ細かな処遇が行われなくなる」などと反対の意見を示す一方、「選挙権など他の制度との関係で対象年齢の整合性をとったほうが国民にはわかりやすい」など賛成の意見も紹介し、結論は示していない。

日弁連の中本和洋会長は声明で、「18歳・19歳も含め、その多くが生育環境や資質・能力にハンディを抱えている」と指摘。そうした少年たちの自立のために、現行の少年法の「きめ細やかな福祉的・教育的な手続が必要であり、かつ有効」「これ(現行少年法)に代わりうる法制度設計は困難」だとしている。

声明の全文は次の通り。

●法務省勉強会の取りまとめ報告書を受けて、改めて少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明

本年12月20日、法務省の「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」は取りまとめ報告書を公表した。これは、2015年9月17日に自由民主党政務調査会が提出した「成年年齢に関する提言」を受けて開催された同勉強会の議論状況をまとめたものである。

本報告書は、少年法の適用年齢を現行の20歳未満から18歳未満へと引き下げることについては賛否両論があるとしつつも、少年法の適用年齢を18歳未満へ引き下げた場合の「若年者」に対する刑事政策的措置について幅広く検討を加えている。これにより、今後、少年法の適用年齢引下げを前提とした議論が進む懸念が否定できない。

現行少年法は、20歳未満の者が犯した全ての事件を家庭裁判所に送致し(全件送致主義)、家庭裁判所調査官や少年鑑別所による科学的な調査と鑑別の結果を踏まえ、少年に相応しい処遇を決する手続を採用している。今日の非行少年たちは、18歳・19歳も含め、その多くが生育環境や資質・能力にハンディを抱えているのであり、そのような少年たちが更生し、社会に適応して自立していくためには、現行少年法の全件送致主義の下でのきめ細やかな福祉的・教育的な手続が必要であり、かつ有効である。そしてその結果、国の重要な施策である少年の社会復帰や再犯防止にもつながっているのであり、このような現行少年法の有効性については、今回の勉強会で出された有識者の意見を含め、異論がないところである。適用年齢を20歳未満とする現行少年法は、長年にわたって有効に機能してきたのであって、18歳・19歳に対して、これに代わりうる法制度設計は困難である。

今後「若年者」に対する刑事法制の在り方を検討する場合にも、少年法の適用年齢引下げを前提とすることなく、飽くまで20歳以上の若年成人を対象とした検討を行うべきである。

当連合会は、本報告書の公表を受け、改めて少年法適用年齢引下げの点について反対するとともに、今後予定されている検討作業の中で、少年法の適用年齢を引き下げることの問題点について、更に分かりやすく主張するよう努める所存である。

2016年(平成28年)12月22日

日本弁護士連合会      

会長 中本 和洋 

(弁護士ドットコムニュース)

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