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バックレ、仕事が合わない…自治体が「保護観察中」の少年採用、継続性に課題
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バックレ、仕事が合わない…自治体が「保護観察中」の少年採用、継続性に課題

鹿児島市は3月下旬、鹿児島地区保護司会と協定を結び、保護観察中の18〜19歳の少年少女を臨時職員として採用する取り組みを始めた。社会との接点や規則正しい生活リズムを身につけてもらい、次の職場での正規雇用につなげてもらう試みだ。

鹿児島市では、保護司会が推薦した候補者を面接で選考。原則6カ月以内、最長1年間雇用する。給与はほかの臨時職員と同水準で、仕事内容は清掃やゴミ収集などが候補に上がっている。

ネットには「悪いことすると優遇される世の中」といった批判的な声もあるが、法務省によると、再犯や再非行防止に効果があるという。一方、同様の取り組みが全国で増える中、「受け入れが少ない」「雇用者が長続きしない」などの課題も浮き上がってきた。

●「無職」だと再処分率が50%を超える

保護観察中の少年少女の有期採用は、2010年に大阪府吹田市が始めたとされる。現在はおよそ40の自治体が取り組んでおり、国では法務省や厚生労働省が実施している。

取り組みの目的は、再犯・再非行を防止し、社会復帰を支援すること。犯罪白書によると、2014年に保護観察を終えた少年少女のうち、就職できた人に限ると再処分率は約14%。一方、無職の人の場合は半数を超える約56%だった。

全国の自治体に導入を依頼している、法務省の担当者は次のように語る。

「無職のままでいると、再犯・再非行につながることが多い。就労の経験を糧に、新しい就職先を見つけてもらえればと思っています。また、彼らをどう指導していくかについては、まだノウハウがありません。国や自治体でノウハウを積み上げ、その内容を民間企業に還元できればと考えています」

●「継続性」の課題にどう向き合うか

こうした社会的意義がある一方で、課題も見えてきた。

「総数は把握していませんが、採用は1人というところが多いと聞きます。また、制度はあっても、常に雇っているわけではないようです」

全国に先駆けて雇用を始めた吹田市でも、保護司会からの推薦がなくなり、採用は2013年4月から途絶えている。それまでに7人を受け入れたが、うち4人は予定期間が終わる前に辞めてしまったという。

「定着率が課題になりました。うちはPCを使ったデスクワークや事務補助が中心。それを8時間弱続けることが、就労者に合っていたのかどうか…」(吹田市人事室)

このような事例は珍しくないようだ。法務省の担当者は、「『雇用された人が急に来なくなる』という話は聞きます。また、導入したものの『どんな仕事を任せていいか分からない』という自治体もあります」と打ち明ける。結果として、保護観察の対象者に不慣れなコピーや書類整理など事務補助を任せる自治体が多く、ミスマッチが起きているのだという。

鹿児島市では、これらの課題も踏まえ、より雇用者の適性にあった仕事内容を検討しているという。市の人事課は、

「保護司と相談して、『事務補助ではなく、ゴミ収集などの労務職場(技能職場)で採用した方が働きやすいのでは』と考えています。ただ、本人との面談を通して、具体的な仕事や勤務時間を決めます」


と語る。一方で、「まだ雇用そのものはしてないので、仕事を続けてもらえるかどうか、人数をどれだけ受け入れられるかなど、見通しが分からない部分が多い」とも話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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