山口県美祢市で8月、和菓子店で店主の男性が殺害され、妻が重症を負った事件で、山口県警が10月25日、男2人を強盗殺人などの疑いで逮捕したと報じられました。
報道によると、2人は8月27日から28日にかけて、夫婦の自宅で夫婦の頭を鈍器で殴るなどして店主を殺害し、妻に重症を負わせ、金庫を奪った疑いが持たれています。
ネット上では厳罰を望む声もあがっていますが、今回の事件で有罪になった場合、どのような量刑が想定されるのでしょうか。死刑はありうるのでしょうか。簡単に解説します。
●【この記事のポイント】
・山口県美祢市の和菓子店主殺害事件で男2人が逮捕され、量刑や死刑の可能性に注目が集まっている ・「強盗致死」では死刑が選ばれるケースは極めて稀だが、今回は殺意がある「強盗殺人」の疑いで逮捕された ・被害者が1人の「強盗殺人」でも死刑判決が出た前例はあるが、犯行の計画性や主導的立場の有無、妻の重傷などが今後の判断要素となる
●「強盗致死」と「強盗殺人」は何が違う?
強盗の際に人を死亡させた罪について、法律に定められた刑は死刑か無期拘禁刑の2つだけです(刑法240条)。
このうち、殺すつもりがなかった場合を「強盗致死」、殺意があった場合を「強盗殺人」と呼んで区別しています。
条文も刑の枠も同じですが、実際の裁判での扱いは大きく違います。
亡くなったのが1人の強盗致死について、死刑を選んだ例は「ないといってよく」、多くは刑を軽くして有期の刑にしている、と述べた裁判例があります(東京高裁平成26年(2014年)9月17日判決)。
しかし、今回の2人が逮捕されたのは、強盗致死ではなく、殺意のある強盗殺人の疑いです。
●強盗殺人なら死亡1名でも死刑はある?
強盗殺人で、亡くなった人が1人の事件でも死刑が確定した例があります。
横浜市の中華料理店主を拳銃で殺害して現金を奪い、さらに別の事件で駅員を撃って重傷を負わせた被告人は、1審の無期懲役が2審で死刑となり、最高裁も維持しました(最判平成23年(2011年)3月1日)。
もっとも、被害者1人の強盗殺人で、最初から殺すことまで計画していなかった場合には、無期懲役が選ばれた例が相当数あると、最高裁は指摘しています(最決平成27年(2015年)2月3日)。
量刑を分ける大きな要素の1つは、最初から殺す計画だったかどうか(計画性)です。
また、共犯の場合には、誰が主導したかも問題となります。
さらに、今回の事件では「妻への強盗殺人未遂」も含まれている点が重要です。
過去の裁判例でも、死亡したのが1人であっても、別の被害者を殺害しようとして重傷を負わせているようなケースでは、結果の重大性が極めて重く評価されています。
このほか、殺人などの重い前科があるかどうかも考慮されます。
報道によると、今回の2人はいずれも便利屋の仕事をしていたとみられ、知人どうしでしたが、夫婦とは面識がなかったそうです。
NHKは、捜査関係者の話として、2人が金庫に現金があることを知って狙った可能性があると報じています。
面識のない2人が、なぜこの家を狙ったのか。その時点で、殺害まで考えていたのか。どちらが主導したのか。
今後の捜査で明らかになる犯行の経緯や計画性の有無によって、死刑が選択肢に入るかどうかが左右されることになります。
小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)