秋の行楽シーズンを迎え、紅葉を楽しむ登山客で山がにぎわう季節になりました。そんな中、SNSでは、一人や女性同士で山を訪れた際、見知らぬ中高年男性にしつこく話しかけられたり、後をついてこられたりしたという女性たちの体験談が相次いでいます。
「こっちは山見にきてんだよ」 「おじさん見にきてるわけじゃないんだよ」 「一人で自由に散策したいから一人で来たのに、ついて来ようとするのはやめてほしい」
こううったえた女性は、アルペンルートや上高地を訪れた際、男性から話しかけられ、そのまま一緒に行動しようとされたといいます。「山について教えてあげる」という親切心なのかもしれないとしつつ、「何も望んでないし、迷惑です」と本音を明かしました。
●女性にだけクイズを出しながらついてくるおじさん
実は、同じような経験をしたという女性は少なくありません。
槍ヶ岳から下山していた女性は、女性登山者ばかりに延々とクイズを出しながらついてくる男性に遭遇したといいます。他にも、「いつも一人なの?」「今度オススメのところ紹介するよ?」「どこから来たの?」などと話しかけられ、そのままついてこられたという女性もいます。
高尾山を女性2人で登っていた際、男性からずっと話しかけられたという体験談も。ペースを上げてもついてくるため、逆に長く休憩を取り、男性を先に行かせたといいます。
街中なら店などに逃げ込んだり、人に助けを求めたりすることもできます。しかし、登山道では逃げられる場所が限られ、相手を振り切ろうとして無理にペースを上げることが事故につながるおそれもあります。
一方、登山中にたまたま同じルート、同じペースになっている可能性もあります。では、女性が嫌がっているにもかかわらず、話しかけながら後をついて歩く行為は、どこから法的な問題になるのでしょうか。
寺林智栄弁護士に聞きました。
●言動によっては迷惑防止条例違反に
──女性一人または女性グループで登山している場合、見知らぬ男性が長時間にわたって後をついて歩くケースがあるようです。こうした行為は、何らかの犯罪や条例違反にあたる可能性はありますか。
見知らぬ男性が、女性の拒絶する態度を認識しながら執拗に後をついて歩く行為は、ストーカー規制法上の「つきまとい等」に該当する可能性があります。
ただし、同法の適用には、恋愛感情その他の好意の感情や、それが満たされなかったことへの怨恨を充足する目的が必要です。
また、ストーカー規制法上、処罰対象となる「ストーカー行為」には原則として行為の反復が必要です。そのため一度の登山中に長時間つきまとっただけで、直ちに同罪が成立するとは限りません。
こうした目的や反復が認められない場合でも、行為の態様によっては、各自治体の迷惑防止条例違反に該当する可能性があります。さらに、女性の進路を妨害したり、威圧的な言動によって行動の自由を制約したりした場合には、軽犯罪法違反や強要罪などが成立する余地もあります。
●身の危険を感じたら110番通報を
──山中で知らない人につきまとわれた場合、女性登山者はどのように対応すればよいでしょうか。「ついてこないでほしい」と意思表示することや、相手の言動を記録することには、後に警察へ相談する際などにどのような意味がありますか。また、その場で110番してもよいのでしょうか。
山中で見知らぬ人につきまとわれた場合、まずは身の安全を最優先に考え、山小屋や登山者の多い場所へ移動し、周囲に助けを求めることが大切です。
「ついてこないでほしい」と明確に伝えることは、相手が拒絶の意思を認識していたことを示す事情となります。ただし、拒絶の態度をとることで男性を逆上させる心配があるなど、危険を感じる場合には、無理に意思表示する必要はありません。
また、相手の言動や容姿、日時、場所などを記録しておくことは、警察への相談や被害の立証に役立ちます。警察庁も、被害状況の記録や証拠の保存を推奨しています。身の危険を感じたり、執拗につきまとわれたりしている場合には、その場で110番通報して構いません。