「天皇の末裔」などと称し、現金をだまし取ったとして、東京都内に住む無職の男性が10月中旬、詐欺の疑いで富山県警に逮捕された。
報道によると、男性は2025年7月、富山市の60代女性に対して、自分を「天皇の末裔」と称したうえで、現金計300万円をだまし取った疑いが持たれている。
男性は次のようなウソを言ったとされる。
「私は世の中の役に立つために王になって困っている人たちのためにお金を出したい」
「9月には返す」
「倍にして返します」
男性は容疑を否認しているという。
今回の逮捕容疑は詐欺だが、そもそも「天皇の末裔」を名乗ること自体に法的な問題はないのだろうか。
一般人が「王」や「皇族」を自称した場合、罪に問われる可能性はあるのだろうか。大和幸四郎弁護士に聞いた。
●「天皇の末裔」を名乗るだけなら犯罪ではない?
──「天皇の末裔」を名乗ることは犯罪に問われないでしょうか。
ただちに犯罪になるわけではありません。ただし、注意したい法律があります。軽犯罪法1条15号です。
この規定は、官公職や学位など、法令で定められた称号を偽って名乗る行為を処罰の対象としています。
実は「王」も、皇室典範6条に定められた皇族の称号の一つです。
そのため、単に「天皇の子孫」だと主張する場合とは異なり、皇族としての「王」を偽って名乗った場合には、軽犯罪法に抵触するかどうかが問題となる可能性があります。
ただし、一般的な意味で自分を「王」と称するだけでは、違法にならないと考えられます。実際にどのような意味で名乗ったかが重要になるでしょう。
●「倍にして返す」は詐欺罪になる?
──では、ウソの肩書でお金を集めた場合はどうでしょうか。
刑法246条1項は、人を欺いて財物を交付させた場合、詐欺罪として10年以下の拘禁刑を科すと定めています。
ただし、ウソをついてお金を受け取れば、必ず詐欺罪になるわけではありません。
重要なのは、相手がお金を渡すかどうかを判断するうえで重要な事実についてウソをつき、その説明を信じた相手が金銭を渡したかどうかです。
今回の事件では、男性が「9月には返す」「倍にして返します」と説明したとされる点も重要です。
仮に、最初から返済する意思や能力がないにもかかわらず、返済を約束して金銭を受け取っていた場合、詐欺罪が成立する可能性があります。
一方、約束どおりに返済できなかったという結果だけで、詐欺罪が成立するわけではありません。
今回のケースでも、男性がどのような説明をし、女性が何を信じて300万円を渡したのか。さらに、男性に当初から返済する意思や能力があったのかが、詐欺罪の成否を判断するうえで重要になります。