見知らぬ高齢女性から「タクシーが来なくて。お金を払うので乗せてもらえませんか」と声をかけられた──。
子どものお迎えのため、車を停めて待っていたときの出来事をつづったXの投稿が話題になりました。
投稿者によると、声をかけてきた女性は90歳。友人とバレエを鑑賞する予定でしたが、電車に乗り遅れ、すでに45分遅刻していたそうです。
事情を聞いた投稿者は、女性を目的地まで送り届けました。お金を受け取ることは辞退したものの、お礼として「みかん」を受け取ったといいます。
この投稿には「良い話」「ご婦人が良い人に出会えてよかった」など、称賛の声が寄せられました。
一方で、「お金を受け取ったら白タク行為に問われかねない」「事故でけがをさせたらどうするのか」と、こうした行動に潜むリスクを指摘する声も上がっています。
困っている人を車に乗せ、お礼を受け取ることは違法なのでしょうか。現金ではなく「みかん」なら問題ないのでしょうか。
交通の問題に詳しい西村裕一弁護士は「安易に他人を乗せるべきではない」と指摘します。西村弁護士に聞きました。
●「善意」の送迎でも白タク?拘禁刑の可能性も
──そもそも「白タク」とは、どのような行為を指すのでしょうか。
「白タク」とは、自家用車を使って、有償で人を運送する行為を指します。
道路運送法78条は、原則として、自家用車を有償で運送の用途に用いてはならないと定めています。
違反した場合、1年以下の拘禁刑もしくは150万円以下の罰金、またはその両方が科せられます(同法97条1号)。
さらに、事業として反復継続しておこなえば、「無許可営業」にあたり、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります(同法4条1項、96条1号)。
●一度きりの送迎でも違法?ガソリン代なら問題ないのか
──今回のように、困っている見知らぬ人を目的地まで送った場合、一度きりでもお金を受け取れば「白タク」にあたるのでしょうか。
たとえ一度きりであっても、見知らぬ人を送迎してお金を受け取れば、白タク行為にあたると考えられます。
ただし、走行距離に応じたガソリン代や高速道路の通行料金など、実際にかかった費用の範囲内であれば、違反にならないとされています。国土交通省のガイドラインでも、こうした考え方が示されています。
●みかんでも「量」によっては法的リスク
──今回、投稿者は現金を受け取らず、お礼として「みかん」をもらっています。現金でなければ問題ないのでしょうか。
禁止されているのは、現金を受け取る行為だけではありません。
たとえば、食事を奢ってもらったり、品物を受け取ったりした場合でも、白タク行為として違反になる可能性があります。
今回の「みかん」についても、受け取った量によっては、単なるお礼の範囲を超え、有償の運送と評価される可能性があります。
そのため、よかれと思ってしたことでも、安易に他人を車に乗せたり、金品を受け取ったりするのは控えるべきでしょう。
●「ちょっと乗せるだけ」のつもりが…事故で賠償責任も
──ほかにも、知らない人を車に乗せる際に注意すべきことはありますか。
今回のように他人を乗せた場合に、万が一、交通事故が起きると、思わぬトラブルに発展するおそれがあります。
「ちょっと乗せるだけだから」と安易に引き受けたとしても、事故で相手にけがをさせれば、運転者が損害賠償責任を負うこともあります。
また、運転者と車の所有者が異なる場合には、所有者も運転者と連帯して賠償責任を負うことがあります。
事故が起きれば、治療費や慰謝料などの負担が生じます。任意保険で補償できたとしても、等級ダウンで保険料が上がることも考えられます。
やはり、安易に他人を乗せることは避けるべきでしょう。