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緊急性ない「110番」年間162万件、警察業務に支障…法的責任を問われる可能性も
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緊急性ない「110番」年間162万件、警察業務に支障…法的責任を問われる可能性も

「宿探して」「渋滞情報教えて」。全国の警察が2016年1月から11月に受理した110番通報のうち、緊急性がない通報が162万件にのぼることが報じられた。

報道によると、こうした通報は全828万2235件の19.6%を占めている。中には「入院中に誰も面会に来ない」「携帯電話を買って110番を試した」といった内容もあった。警察庁は、事件・事故以外の不急の場合は「#9110」を利用するよう呼び掛けている。

不要不急の110番通報に対応するために、本来急いで対応すべき事件・事故などに対応できない事態が起きるかもしれない。本来必要ない110番通報をすることは法的に問題になりうることはあるのか。本多貞雅弁護士に聞いた。

●民事・刑事それぞれの場面で法的に問題になる可能性がある

「110番は、事件・事故等の緊急通報用の電話番号です。警察は、110番通報を受けて現場等に急行することになるのですから、一刻を争う事態が想定されています。

そのため、110番に対する不要不急の電話やいたずら電話によって、警察の緊急対応に支障が生じることは十分考えられるところです」

警察の対応に支障が生じた場合、法的に問題となるケースはあるのか。

「過去には、海上保安庁に虚偽の通報をして、緊急出動させた事案について偽計業務妨害罪として有罪判決がなされたこともあります。この罪の法定刑は、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金となっています。

ただし、この罪が成立するためには、『警察業務を妨害しうる通報である』ということを認識している必要があります。

先ほどあげた海上保安庁のような虚偽通報のケースであれば、そうした認識があることは明らかといえますが、中には『不要不急の相談ごとであっても110番にかけてよい』と勘違いしている通報もあるかも知れません。

そのような場合には、業務妨害罪は成立しませんが、態様が悪質で、実際に警察の出動が遅れて被害が生じたなどの事情があれば、緊急の110番通報をした被害者等から民事上の損害賠償を請求される余地はあるでしょう。

いずれにしても、緊急時にすぐに通報すべき110番のほかに、緊急ではない場合に相談できる警察相談専用電話『#9110』があることが広く周知され、利用されることが必要だと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

本多 貞雅
本多 貞雅(ほんだ さだまさ)弁護士 本多総合法律事務所
東京弁護士会所属。裁判員裁判や否認事件をはじめとした刑事事件、外国人の入管事件(長期かつ無期限収容問題等)に精力的に取り組んでいる。ハマースミスの誓い事務局長。

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