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裁判所の電子開廷表、職員自作の検索システムに不満の声「タップが大変」「紙も残せ」
電子開廷表(メモを元にしたイメージ)

裁判所の電子開廷表、職員自作の検索システムに不満の声「タップが大変」「紙も残せ」

東京地裁・高裁などが入る東京都千代田区の裁判所で、8月15日から導入されたタブレット型の「電子開廷表」。一度に開廷情報を見られる傍聴希望者が増えた一方で、一覧性の低下や操作性の悪さなどに不満の声もあがっている。

庁舎管理を担当する東京高裁広報によると、タブレットは18台で約390万円。メーカーは非公表だが、裁判の検索システムは、裁判所職員がつくったという。

「(システム関係の)専門部署があるわけではなく、PCの能力が高い職員に任せたというわけでもない。(具体的な数字は明かせないが)各段階で、多くの職員がかかわってつくりました」(広報)。なお、内製した理由については、「今期中に実施するため」と回答している。

●予定は1件1件スクロール、全部チェックするのに300回以上のタップが必要

これまでの紙の開廷表は、刑事や民事ごとにファイリングされており、各数冊ずつしかなかった。そのため傍聴希望者が多いときは、順番待ちが生じることがあった。

これに対し、新しく導入されたA4サイズの電子開廷表は、1台で刑事や民事など、当日開かれる裁判のスケジュールを把握できる。全部で18台あり、順番待ちはかなり軽減された。

また、時間や「新件」「判決」などを指定して、裁判を調べたり、刑事なら「殺人」や「窃盗」など、起訴された罪名で検索できたりと、紙の開廷表にはない機能も備わっている。

一方で、一覧性は大きく低下した。たとえば、8月22日の地裁民事は357件あったが、電子開廷表では一度に5件までしか表示できない。残りは1件ずつスクロールしないといけないので、全部見るためには300回以上ボタンをタップする必要が生じる。

さらに、検索結果は開廷時間でのソートしかできず、紙の開廷表のように、裁判の担当部署ごとに並べかえできない。各部署には一定の専門性があるため、類似事件が固まりやすい。現在の電子開廷表では、全件表示時に効率的なチェックが困難だ。

そのほか、電子開廷表では、民事裁判の裁判官や担当書記官の名前など、表示されなくなった項目もいくつかある。広報によると、元データからの移行が困難なためだというが、情報の減少は望ましいことではない。

●裁判所は「紙の開廷表」撤去も検討…ぜひ残してほしい

まだ紙の開廷表も残っており、守衛に声をかければ、見せてもらうことができる。しかし、9月以降は不透明な状況だ。裁判所は現在、紙の開廷表の希望者に対し、電子版への意見を聴取している。集まった意見を参考に今後、紙の開廷表の撤去も検討するという。

では一体、どんな意見が寄せられているのか。裁判所は取材に対し、「現在収集中」として、具体的な内容を明かさない。しかし、記者が現場で聞いた限りでは、「一度に見られる情報が少ない(一覧性が低い)」「全部確認するのに時間がかかる」といった声が多いようだ。

都内のある弁護士は、「デザインが素朴なのは、裁判所の職員がつくっていたからなのか」と納得した様子。「スクロール用のボタンが小さい。タブレットなら、スワイプでページをめくれると良いのだが…。現状、あらかじめ傍聴したい裁判が分かっている場合は良いが、パッと見て、関心がある事件のあたりをつけるのには向いていないのではないか」

一方、裁判ウォッチャーでお笑い芸人の阿曽山大噴火さんは、「行列が減ったのはメリットだが、もともとの原因の1つは、1週間分の開廷表を3年前に公開しなくなったことだ」と指摘する。

「今はその日の分しか見られないが、以前は上の階に行けば、水曜日に翌週分の開廷表が発表されていた。中止して以来、毎日傍聴している人たちが開廷表の列に並ぶようになった」

阿曽山さんは、「以前のような、1週間先の情報の閲覧や担当部署ごとの表示機能、被告人の名前での検索機能などを追加してほしい」と電子版に要望。「(自分は)17年、紙の開廷表を見てきたので慣れてしまっている。去年(10月)あった停電などのハプニングがあったときが不安だ」として、紙の開廷表の存続も希望していた。

電子開廷表になって、新しくできることは増えたし、便利になった部分もある。しかし、まだまだ改善できる要素はある。少なくとも、従来の紙の使用感と同じくらいになるまでは、紙の開廷表も残してほしいところだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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