「息子がコインロッカーに鍵をかけて荷物を預けたら盗難に遭いました」。そんな投稿が弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられています。
相談者によると、中学生の息子がショッピングセンター内にある鍵付きのコインロッカーにサッカー道具一式が入ったリュックを預けたところ、リュックごと盗まれてしまったそうです。警察には「息子さんは鍵を持っていたし、盗難です」と言われ、後日ロッカーが壊れていたことがわかったそうです。
この場合、お店側に損害賠償請求はできるのでしょうか。半田望弁護士に聞きました。
●ロッカー設置者には責任はない
「コインロッカーの利用については、多くの場合ロッカーの設置者が定める約款があり、ロッカーの使用にあたっては約款の定めに従うことになります」
半田弁護士はそう指摘する。約款にはどう書かれているのでしょうか。
「いくつかの約款を確認した限りでは、コインロッカーに入れた物が紛失・壊れた場合の定めをおかない約款が多いのですが、この場合には民法等の定めに従い責任の所在を判断することになります」
民法では、どう判断されるのでしょうか。
「民法や商法には荷物を預かる『寄託』という契約もありますが、コインロッカーについては『ロッカーのスペースを利用料を支払って借りる』賃貸借契約である、と理解されています。また、その旨明記している約款もあります。
そうすると、鍵や荷物の管理はあくまでも賃借人である利用者の責任において行うべきことになり、コインロッカー内の荷物が盗難にあったとしても、貸主であるロッカー設置者には法律上の責任はありません。賃貸している家に泥棒が入った場合でも大家さんに責任がないことと同じです」
●荷物の管理はあくまでも利用者の責任
では、鍵が壊れていた場合はどうでしょうか。
「この場合でも、ロッカーの設置者は『ロッカーを使用する権利』を提供するだけで責任を果たしたことになり、荷物の管理はあくまでも利用者の責任となりますので、荷物の盗難についてロッカーの管理者の法的責任を問うことは難しいと思われます。借家の鍵が壊れていた場合と同じように考えることになるでしょう」
そうなると今回の相談者は損害賠償請求はできないのでしょうか。
「はい。今回のケースでは、お店に対して荷物の時価額についての損害賠償をすることは難しいと思われます。ただ、施錠できることを前提としてロッカーの利用料が設定されていたのであれば、鍵が壊れていたことを債務不履行として、ロッカーの利用料相当額の賠償を請求することは可能でしょう。
ただし、多くの場合にはロッカーの設置者が道義的責任として見舞金を支払うこともあり、それに対応する損害保険もあるようです。もっとも、これは法的な責任ではありませんので、見舞金等の支払いがあるかどうかは店側の判断になります」