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コインハイブ事件、被告人質問 「JavaScriptで同意を取るほうが稀」
横浜地裁

コインハイブ事件、被告人質問 「JavaScriptで同意を取るほうが稀」

自身のウェブサイト上に他人のパソコンのCPU(処理装置)を使って仮想通貨をマイニングする「Coinhive(コインハイブ)」を保管したなどとして、不正指令電磁的記録保管の罪に問われたウェブデザイナーの男性(31)の第3回公判が1月17日、横浜地裁(本間敏広裁判長)であり、被告人質問が行われた。

●CPU使用率50%「不快感を与えず問題のない設定」

弁護側の質問から開始。男性は自身のサイトにコインハイブを導入した経緯について、2017年9月ごろにウェブメディアの記事でコインハイブを知り「新しい技術として興味深く、試してみたいと思った」と説明。

ローカル環境でCPU使用率0%〜100%までテストした際に、「CPU使用率50%であればユーザーに不快感を与えず問題のない設定」と思い、自身のサイトに設置したコインハイブはCPU使用率50%の設定にしたという。

弁護人の「コインハイブを設置することで、ユーザーから反感を買ったり嫌がられたりするかもしれないとは思わなかったか」との質問に、「あらかじめテストを行い(ブラウザが遅くなるなど)不快感がないように調整したし、ユーザーと一緒に作り上げてきたサイトなので受け入れてもらえると思った」と話した。

コインハイブの利益については「調べる中で利益が少ないと思っていたので、あまり期待していなかった。広告に代替するものとして設置したのではなくテスト的に試した」と説明した。

同時期に自身のブログでコインハイブについて紹介する記事を書いたが、「新しいマネタイズ手段であり面白いと思い、多くの人に知ってもらいたかった。当時違法技術と指摘する人はおらず、(違法技術だと思っていたら)紹介しなかった」と話した。

男性はツイッターで「ユーザーの同意なくコインハイブを動かすのはグレーではないか」といったユーザーの指摘を受けた後、最終的にサイトからコインハイブのプログラムを消した。

その理由については「スクリプトの改修は難易度が高く、利益も上がっていなかったため、そこまでの作業時間が取れないと考えた」と話した。

●正式裁判請求「IT業界によくないと思った」

男性は2018年3月末、サイトにコインハイブを設置したとして、不正指令電磁的記録取得・保管の罪(通称ウイルス保管罪)で横浜簡裁から罰金10万円の略式命令を受けたが、命令を不服として正式裁判を請求した。

正式裁判を請求したことについては「悩んだ部分だが、クリエイターが取り締まられるとIT業界によくないと思った」と振り返った。

●「JavaScriptで同意を取るケースのほうが稀だと考えていた」

検察側の質問で、サイトの閲覧者から指摘を受け、ユーザーの同意を取ったほうがいいと判断したかについて問われると、「同意を取ったほうがいいという人がいると認識した。そのほうがユーザーの納得感が得られるというのには同意した」と話した。

「コインハイブを導入当時は個別に許諾を求めることは、必ずしもユーザーのメリットにはならないと考えたのか」との裁判官の質問には、「ユーザーに許可を得るべきものか、取らないほうが親切かを測るための試験的な導入だった」と説明。

とりあえず許諾を求めずにやろうと思った理由を問われ「そもそもJavaScriptで同意を取るケースのほうが稀だと考えていたため」と答えた。

公判は5回開かれ、2月18日に最終弁論や論告求刑が行われ結審する。判決公判は3月に予定されている。

(弁護士ドットコムニュース)

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