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東京五輪の公式ドメインは2005年に取得…「先手必勝」のネット戦略で悪用防止
急ピッチで建設が進む新国立競技場、2018年6月撮影(Ryuji / PIXTA)

東京五輪の公式ドメインは2005年に取得…「先手必勝」のネット戦略で悪用防止

2020年に向け、東京五輪・パラリンピックの開催準備が急ピッチで進んでいる。近代五輪が1896年にスタートしてから現在まで、そのあり方は様変わりしてきたが、最も変化したのがインターネットの登場だろう。国内でも1995年にWindows95が発売されるなど、ネットは1990年代後半から一般に広まってきた。

五輪では、近代五輪100周年にあたる1996年開催アトランタ大会で、初めて公式サイトを開設。以来、各大会はネットを積極的に活用してきた。しかし、ネットの実態が複雑化するにつれ、なりすましや類似サイト、五輪マークといった知的財産の悪用などへの対策も同時に求められるようになっている。

東京五輪も2005年8月には、現在の公式サイト「http://tokyo2020.org/」のドメインが早くも取得されている。2016年開催を目指した東京五輪招致が都議会で正式決定される以前のことで、少なくとも13年前からネット対策がとられてきたことが、弁護士ドットコムニュースの調べでわかった。

一体、どのような戦略があったのだろうか。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に聞いた。

●2016年東京五輪招致の決議前に、2020年のドメイン取得

今年2月、東京五輪のURLが「https://tokyo2020.jp/」から、現在の「http://tokyo2020.org/」に変更された。一体なぜなのか。

「国際オリンピック委員会(IOC)と東京2020組織委員会との間で、『tokyo2020.org』をオフィシャルドメインとすることを決定したことを受けて変更しました。『.jp』(国別トップドメイン)については、『.org』(分野別トップドメイン)が使用可能になるまで暫定的に使用するものとしていました」と広報担当者は答える。

しかし、「tokyo2020.org」という現在のドメインが登録された記録を調べると、2005年8月6日にまでさかのぼる。この時、組織委員会どころか、招致委員会すら正式に設立されていない。それどころか、当時は2016年の開催を目指した東京五輪招致が決議される前の段階であり、正式決議は2006年3月の都議会だった。2020年の東京五輪開催を見越した判断があった証左だろう。誰の判断だったのだろうか。

これに対し、東京五輪組織委員会は次のように回答している。

「ご認識のとおり登録当時に当組織委員会は発足しておりませんため、 登録者が誰であったか、どのような判断で登録されたかについて回答できる立場にございません。当組織委員会は、前登録者から適切に移管を受けておりますが、前登録者の詳細や移管に関する経緯については回答を差し控えさせていただきます」

●第三者の悪用防止のため類似文字列のドメインを「防御」

この他、「tokyo」「olympic」などの言葉を組み合わせたドメインを調べてみると、「tokyoolympic.jp」は2008年8月に東京五輪招致委員会が、「TOKYO2020.jp」は2015年8月に東京五輪組織委員会が、それぞれ取得している。

これについては「正式なものとして採用を検討するため、またオフィシャルドメインの類似文字列のドメインの第三者が取得して悪用することを防止するために登録しました」と話す。

こちらも「先手」が打たれているようだ。これ以外にも登録されたものがあるようだが、「機微情報になるため、開示は控えさせていただきます」とのことだった。

では、せっかく取得し、守った公式サイトは大会終了後はどうなるのだろうか。実は、一定期間を経て閉鎖。アクセスしても、IOCが大会の歴史をまとめたページに転送されることになる。

●国際的スポーツ大会の知的財産「常に大きな問題」

今後、2020年に向けて、東京五輪・パラリンピックの情報はネット上でさらに増えるだろう。しかし、気をつけなければいけないのが、エンブレムやマーク、マスコットキャラなどの知的財産( https://tokyo2020.org/jp/copyright/ )の利用だ。

「オリンピック・パラリンピック競技大会に限らず、国際的なスポーツ大会において知的財産の不適切使用(アンブッシュマーケティング)は常に大きな問題となります。2020年 に開催される東京大会において知的財産が適切に管理されることは重要なことと考えています」と広報担当者。具体的には、どのような対策を取っているのだろうか?

「体制や人員等についての詳細は控えさせていただきますが、当組織委員会では、メディアや広告等を対象としたアンブッシュマーケティングのモニタリング調査を実施しており、対応が必要な案件については、事案に応じて適切に対処しています。また、自治体、メディ ア等さまざまなステークホルダーの方々に対しては、オリンピック・パラリンピックの知的財産に関するガイドラインを作成・配布し、説明会を実施しています。今後も継続的な関係各所への説明を予定しています」

弁護士ドットコムニュース編集部では、無断でオリンピックのエンブレムを貼り付けている一般ユーザーによる情報サイトも発見している。これについては、「個別のサイトについてのコメントは差し控えさせていただきますが、オリンピック・パラリンピックの知的財産が不適切に使用されていると判断した場合については、当該使用を控えていただくようにお願いしています」という。

●個人のブログやSNSに「オリンピック」は使える?

また、エンブレムやマスコットに限らず、用語にも注意が必要となる。

「『オリンピック』、『OLYMPIC』や『TOKYO 2020』等は当組織委員会が管理する登録商標であり、商品、サービス、商業目的のサイトでの使用等、商標的使用についてはお断りしています。

一方、個人が発信する情報内(個人の趣味のホームページ、ブログや各種 SNS等)においては、商用的な使用をされていない限り特に問題としておりません。具体的には、使用態様も含めた個別の事案ごとに判断することとしておりますが、スポンサー集めやバナー広告収入を得る目的などの、営利目的が明確なものや、企業等の協賛が明確なものについては商用的な利用と判断しています。

また、大会のブランド保護については当組織委員会の HP で「大会ブランド保護基準」(  https://tokyo2020.org/jp/copyright/data/brand-protection-JP.pdf )を公開しています。当該ガイドライン中に保護対象となる各種用語の一例を記載していますのでご覧ください」

●「個人がブログや SNSで応援したいという気持ちを歓迎」

広報担当者は最後にこう語る。

「今年は東京大会の開催までおよそ2年となり、今後は企業のみでなく、個人が大会を応援する気持ちでインターネットを含めたさまざまな媒体、場面で東京大会について発信されることが増えると予想されます。

当組織委員会としても、東京大会の成功のため、その機運醸成については積極的に後押ししていきたいと考えており、スポーツを愛し、東京大会を心から楽しみにしている方々の言動、応援を歓迎しています。

個人がブログや SNS 等でオリンピック・パラリンピックを純粋に応援したいという気持ちから『オリンピック』、『OLYMPIC』や『TOKYO 2020』等の用語を使用される場合については、これまでの回答のとおり問題としておりません。知的財産の保護については、使用する全ての方に十分な配慮や理解をお願いしており、使用される態様表現やデザイン等、また商業性の有無等を総合的に勘案し、問題のあるケースについては、 引き続き使用を控えていただくようお願いしていきます」

(弁護士ドットコムニュース)

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