2018年05月24日 09時37分

街中で「わざとぶつかってくるおじさん」は暴行罪の可能性 「女性や子ども標的」SNSで報告相次ぐ

街中で「わざとぶつかってくるおじさん」は暴行罪の可能性 「女性や子ども標的」SNSで報告相次ぐ
画像はイメージです(AH86 / PIXTA)

街中や駅で歩いていると、「わざとぶつかってくる人」がいるーー。実際に被害に遭った人や目撃したという人の報告がTwitterで相次いでいる。「透明なゆりかご」で知られる漫画家、沖田×華(おきた・ばっか)さんも、「黒髪ロング時代は毎回新宿駅でやられました(しかも胸にタックルしてくる)」とツイート、反響を呼んでいた。

このほか、Twitterハッシュタグの「#わざとぶつかる人」では、特に女性から、「中年以上」「スーツ姿の男性」にぶつかられたという声が続出。中には、ベビーカーを押していたり、子どもと手を繋いで歩いていたりする子連れの女性や、妊娠した女性が狙われる悪質なケースもあった。逆に、男性からは「被害に遭ったことがない」という声が寄せられ、弱い立場の女性や子連れが標的になっているようだ。

また、あるユーザーは家族のバースデーケーキを買い、箱を前に抱えて歩いていたところ、被害に遭った。前方から中年のサラリーマン男性が歩いてきたので脇に避けたところ、わざわざ寄ってきてすれ違いざまにわざとぶつかりながら、ケーキの箱をぐちゃぐちゃにしていったという。

被害に遭った人たちは、歩きスマホをしていたわけでもなく、むしろ避けようとしたのに、ぶつかられる場合もある。しかし、怪我をするほどでもなく、注意して逆切れされるのを恐れて、泣き寝入りするケースがほとんどだ。「わざとぶつかってくる人」の法的責任は問えないのだろうか。坂野真一弁護士に聞いた。

●「わざとぶつかる行為」は暴行罪、怪我をしたら傷害罪になる可能性

「わざとぶつかる行為」自体は、罪に問える?

「わざと他人にぶつかる行為は、その他人の身体に対する不法な有形力の行使と言えますから、暴行罪(刑法208条:法定刑は、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料)に該当する可能性があります」

では、わざとぶつかられて、負傷してしまった場合、民事および刑事で、どのような責任に問える?

「刑事責任で考えると、わざとぶつかられて怪我を負った場合は、怪我を負わせた側は傷害罪(刑法204条:法定刑は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)に該当する可能性があります。わざとではなく不注意でぶつかって怪我を負わせた場合でも過失傷害罪(刑法209条1項)に該当すると考えられます。

民事責任を考えるならば、故意又は過失により他人の身体という法律上保護されるべき利益を侵害していますから不法行為(民法709条)に該当する可能性があります。

ただし、ぶつかった事実そのものの立証や、加害者の故意・過失を立証することは相当困難であるため、誰から見ても明らかに故意にぶつかっていった場合でかつその犯行現場を何らかの方法で証拠化する手段(例えば近所のコンビニ店の防犯カメラに写っているなど)がないと、どちらも現実に追及することは相当難しい可能性があります」

●泣き寝入りのケースがほとんど…ぶつかられないようにするには?

女性の中には、胸や腰にわざとぶつかられたという被害もある。これは痴漢では?

「『わざとぶつかる』行為は暴行罪に該当する可能性があることは指摘しましたが、痴漢罪という犯罪はないので、強制わいせつ罪か、いわゆる迷惑防止条例違反に該当するかの問題として考えます。

強制わいせつ罪でいう、『わいせつな行為』とは、被害者の性的羞恥心を害する行為であり、一般人から見ても性的羞恥心を害する行為を必要とするという見解も有力です。

例えば、着衣の上からであっても女性の胸をなで回すような行為は強制わいせつ罪に該当し得ますが、すれ違う際に胸や腰にぶつかる行為は、その形態も様々であり、強制わいせつ罪に該当しうるかは、個別具体的な状況から判断するほかないように思います。

いわゆる迷惑防止条例に関しては、確かにいわゆる痴漢に適用される条文はあるのですが(東京都の場合、5条1項1号)、適用されるのは、正当な理由がなく、しかも人を著しく羞恥させ又は人に不安を覚えさせる行為である必要がありますので、これも個別具体的な状況から判断せざるを得ないでしょう」

もし、わざとぶつかられた場合、泣き寝入りするケースがほとんどだが、何か対策は?

「現実的には、加害者が認めない限り、ぶつかった事実そのものだけでなく、故意過失を立証することは相当困難なので、事後的に責任追及することは簡単ではありません。

被害情報のある道を避ける、大人の男性と一緒に行動する、それがダメでも複数で行動する等、相手がわざとぶつかりにくい状況を作り出すことも必要です。その一方で、例えば友人との話に夢中になって歩道いっぱいに広がって歩いたり、スマホを操作しながら歩くなど、加害を招きかねない状況をご自身で作り出さないことも重要かと考えます」

(弁護士ドットコムニュース)

取材協力弁護士

坂野 真一弁護士
ウィン綜合法律事務所 代表弁護士。京都大学法学部卒。関西学院大学、同大学院法学研究科非常勤講師。著書(共著)「判例法理・経営判断原則」「判例法理・取締役の監視義務」(いずれも中央経済社)、「先生大変です!!」(EPIC社)、「弁護士13人が伝えたいこと~32例の失敗と成功」(日本加除出版)等。近時は相続案件、火災保険金未払事件にも注力。
事務所URL:http://www.win-law.jp/

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