人気女優の広瀬アリス、すず姉妹の兄が、1月15日に道路交通法違反(酒気帯び運転)容疑で静岡県警清水署に現行犯逮捕されたとして、新聞やテレビなどの報道が相次いだ。その後、姉妹がTwitterで「ご心配をおかけし申し訳ございません」とお詫びする事態に発展している。
ただ、兄とはいえ、別人格である成人男性が逮捕されたことに対し、姉妹が公に謝罪しなければいけないのか。しかも逮捕容疑は殺人や強盗致傷といった重大犯罪でもない。
今回は「捜査関係者によると、容疑者は広瀬姉妹の兄」との報道もあり、警察関係者によるリークもうかがえる。今回の問題をどうみているか。佐藤大和弁護士に聞いた。
●逮捕に関係がないタレント名を一緒に報道するべきでない
ーー佐藤弁護士は今回の件について、共同代表理事を務める芸能人の権利を守る「日本エンターテイナーライツ協会(ERA)」にて声明を発表していますね
「今回のように、タレント本人が逮捕されていないにもかかわらず、親族が逮捕されたことを理由に、逮捕とは関係がないタレント本人の名前を掲載し報道することは、タレントに対する不利益も大きく、間接的なイメージダウンにもつながる可能性があります。また、そもそもタレント名を一緒に報道する必要性も低く、避けるべきだと思っています」
●今後の出演内容に影響を与えるおそれ
「タレントのイメージは、タレントの本人の不断の努力、また関係者たちの努力によって作られており、それは企業の『ブランド』と一緒の価値があります。それにもかかわらず、本人と関係がないところでのマイナス報道は、そういった本人や関係者の努力を水の泡にする可能性があります。
そして親族の逮捕報道等は、確かに直接的にタレント本人のイメージダウンにはなりませんが、今後のタレントのCMや出演の起用、出演内容等に少なからず影響を与えるでしょう」
●警察の広報のあり方に疑問
ーー逮捕された兄の名字はタレントの名字とは違いました
「今回、私が最大の疑問に思っている点は、なぜ親族名からタレント名がわかったのかということです。どのような経緯でタレント名が発覚したかわかりませんが、このようなことが発覚してしまう警察の広報のあり方についても問題があると考えています。
タレント本人がTwitterで謝罪をしていますが、そもそも親族逮捕からタレント名が発覚することがなければ、謝罪する必要はなかったと思っています。
憲法21条の趣旨に照らせば、報道の自由は尊重されるべきものとはいえ、マスコミの報道は、その内容一つで、その人や家族、関係者の人生を大きく変えてしまうほどの力があります。事件報道にあたっては、慎重な報道が求められるでしょう」