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2016年03月30日 10時20分

あいつぐ「成年後見人」の不正問題・・・防止する「仕組み」はないのか?

あいつぐ「成年後見人」の不正問題・・・防止する「仕組み」はないのか?
写真はイメージ

成年後見人などとして財産を管理していた高齢女性の預金計約6600万円を着服したとして、名古屋市の元司法書士の男性が3月中旬、業務上横領の罪で名古屋地検特捜部に在宅起訴された。

報道によると、男性は司法書士だった2011年6月から2014年1月にかけて、成年後見人や任意の後見人として管理をまかされていた愛知県内の当時82〜107歳の女性4人の預金口座から、現金を繰り返し引き出して、計約6600万円を着服した疑いがある。

いずれも、成年後見人になって数カ月後に着服がはじまっていた。大半は、男性が自分で使う高級ブランドの腕時計やバッグ代にあてていたという。こうした後見人による横領事件がたびたび報道されているが、防ぐ手立てはないのだろうか。山川典孝弁護士に聞いた。

●「現状では、成年後見人の不正を完全に防ぐことは難しい」

「後見人の不適切な後見実務による被害は、多額に上っています。

最高裁判所の統計によると、2012年の被害総額は約48億1000万円、そのうち専門職による被害は3億円1000万円でした。2013年は約44億9000万円(うち専門職は約9000万円)となっています」

山川弁護士はこのように述べる。どうして後見人による不正が起きているのだろうか。

「成年後見といっても、厳密には成年後見人、保佐人、補助人とわかれますが、ここでは成年後見人を前提にしてお話しします。

成年後見人には、包括的な『財産管理権』があります。日常的に、被後見人の通帳・カード、保険証券、年金証書、印鑑といった財産を保管しているので、簡単に資産を処分できるのです。

たとえば、預貯金口座を解約する場合、成年後見人は、その口座のある金融機関に出向き、必要な手続きをします。その際、被後見人の意思を確認したり、親族に照会するなどといったことは通常はおこなわれません。

また、居住用の不動産を処分する場合以外は、家庭裁判所の許可なども不要です。そのため、現状では、成年後見人の不正を完全に防ぐことは難しいのです」

●「チェック体制をより厳格にする必要がある」

後見人による不正を防止する手立てはないのだろうか。

「家庭裁判所や、弁護士会など各専門職団体が、不正を防ぐために、さまざまな手立てを講じています。

たとえば、東京家庭裁判所では、成年後見の申立て時に、本人の流動資産が500万円を超える場合で、後見人が親族だと、原則として、一定の金額を信託銀行に信託するか、後見監督人をつけなければなりません。

また、成年後見人に選任された場合、毎年1回はかならず家庭裁判所に定期報告することになっています。報告時は、過去1年分の通帳や残高証明書・元利金額等明細書(定期・定額預貯金の場合)なども見せます。これで家庭裁判所は、不透明なお金の動きをチェックします。

さらに、こうした報告が不正確であった場合などには、家庭裁判所が選任した調査人が調べます」

ほかに、防止策はあるのだろうか。

「また、弁護士会など各専門職団体では、それぞれ、独自に研修を行ったり、報告制度を設けたりして、成年後見人や成年後見監督人などが不正を働かないようチェックしています。専門職の成年後見人が不正を働いた場合、一定のお見舞金を支給しているところもあります。

ただ、後見制度を利用している人は、全国で18万人以上にのぼるため(2014年12月末)、一朝一夕に解決できる問題ではありません。そのため、今後もチェック体制をより厳格にする必要があります」


山川弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

山川 典孝弁護士
取扱業務:後見関連業務のほか、債務整理(任意整理、自己破産、個人再生)、労働問題(残業代、不当解雇、パワハラ)、債権回収、交通事故、立退き、消費者問題、行政訴訟、離婚、遺産分割、遺言、刑事など幅広く取り扱っております。
所在エリア:
  1. 東京
  2. 新宿
事務所名:山川法律事務所
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