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民進党、ラブライブ…「迷惑な商標出願」特定人物から相次ぐ、不受理にできず実害も
大量に行われている商標出願の一例

民進党、ラブライブ…「迷惑な商標出願」特定人物から相次ぐ、不受理にできず実害も

「一部の出願人から大量の商標出願が行われている」。特許庁は5月17日、こんな注意喚起の声明を発表した。「民進党」、「ラブライブ」、「伊勢志摩サミット」など、明らかに既存の企業・団体・人物や商品などに関連した商標の出願が、特定の企業や人物から相次いでいるからだ。しかも、それらのほとんどは出願料の支払いがなく、一定期間後に「却下」されている。

「なんでこんなことするのか、私たちの方が理由を知りたい」と特許庁の担当者は困惑している。今回の声明で問題視された出願は、すべてオンラインからのものだという。ITを利用することで、管理や通知書の送付などのコストが減った一方で、このような「迷惑」な出願も増えてしまったようだ。

しかも驚いたことに、「商標の制度上、出願を受けつけないという対応はできません。仮にいたずら目的の出願であっても、受理することになります」という。

特許庁は、問題のある出願はいずれ却下されるため、「あきらめず申請してほしい」と権利者に呼びかけている。しかし、実際には出願を断念するケースが少なくない。横浜市の保屋野光繁弁理士は、こう語る。

「業務上、私もこのような商標出願に引っかかるケースがあります。そのとき、依頼者が商標を使用する前であれば、『変更した方が良い』とアドバイスしています。審査にすごく時間がかかりますから」

●出願料の支払いがなくても、出願は受理されてしまう

時間がかかる理由は、出願料を払っていなくても、出願そのものは認められてしまうところにある。

商標登録は、早い方が優先される「先願主義」。最初の出願の結果が出るまで、後願の審査は始まらない。そのため、たとえ出願料の支払いがなくても、先に出願されてしまうと、審査は後回しになってしまう。通常、出願の却下には4〜6カ月が必要だ。

今年1月には、群馬県の太田市美術館・図書館(年内オープン)が、愛称「おおたBITO」の使用を断念。一連の大量出願のひとつとして、「BITO」が先に出願されており、市は開館スケジュールを考慮して、却下を待てないと判断した。

保屋野弁理士は、「問題のある出願を不受理にするとか、出願料の支払いをもって出願を認めるとか、歯止めをかける仕組みが必要」と訴える。

しかし、問題は一筋縄ではいかない。特許庁はかつて、裁量で出願を不受理にしていたからだ。商標問題にくわしい齋藤理央弁護士は「不受理の法的根拠が明確でなかったこともあり、すべてを受理する今の運用になった。明確な規定がない中、行政の裁量で不受理にすることは、それはそれで国民の不利益が大きいとも考えられる」と話す。

特許庁は、今回の声明で様子を見ながら、「今後も問題が続くようなら、さらなる対応を検討することになる」としている。

●「一部の出願人」が全出願数の1割を占める

声明で指摘されている「一部の出願人」について、特許庁は「具体的な人物や企業名は答えられない」としている。しかし、商標関係者たちは、その主要人物に心当たりがあるという。保屋野弁理士もその一人。「声明を一読して、すぐに彼の名前が浮かびました。同業者はみんなそうだったと思いますよ」。

その出願者は、商標の出願数が全国2位(2015年)の男性。登録住所が同じであることから1位の大阪府の企業と同一視されている。この人物と同社は、「民進党」「STAP細胞はあります」「ドラゲナイ」などを出願し、ネットでも話題になっている。年間の合計出願数は約1万5000件、日本の全出願数の約1割を占めている。

弁護士ドットコムニュース編集部は、この人物のものと見られる電話番号を発見。接触を試みたが、すでに番号が変わっていて、連絡が取れなかった。

(弁護士ドットコムニュース)

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