「下足(ゲソ)の極み」。こんな面白ネーミングが、よっちゃん食品工業から2月6日に商標登録申請され、ツイッターで「笑える」と話題になった。
おそらく、バンド「ゲスの極み乙女。」と、同社が製造するイカの駄菓子をかけたものだろう。イカにちなんだものであるため、今後、何らかの商品に活用することも想定している可能性がある。
「ゲスの極み乙女。」は、実在するバンド名だが、このような形でパロディ的に使った場合でも申請が認められる可能性はあるのか。商標問題に詳しい木村充里弁護士に聞いた。
●アウトになる2つのポイント
そもそも商標とは、どのようなものなのか。
「商標とは、自分の商品やサービスを、他人のものと区別するために使用する『しるし』のことです。文字、図形、記号などのほか、色や音などを商標とすることもあります。
パロディ的な商標の登録や使用については、パロディだから、つまり『元ネタの商標をイメージさせるから』というだけでダメと考えるわけではありません。しかし、商標法で定められた要件に抵触すると、商標登録が認められないことになります」
今回の「下足(ゲソ)の極み」の場合、何がポイントになるのか。
「主に次の2つの要件が問題になります。
(1)『他人の商品やサービスと混同を生じるおそれがないか(商標法4条1項15号)』
もっとも、『下足(ゲソ)の極み』という名前の食品を見て、『バンドの『ゲスの極み乙女。』が関わっている食品だ』と考える人は、(食品と音楽とが完全に別ジャンルということもあり)そこまで多くはない気がします。審査官が、総合的にみて『一般人の感覚では混同しない』と判断するなら、この要件はクリアされます。
(2)『他人の有名な商標と似た商標を、不正の目的で使用していないか(同項19号)』
不正の目的とは、バンド名に似た商標を押さえてお金を取ったり、バンド名のブランド価値(お客さんを惹き付ける力など)を毀損して損害を与えようとしたり、といった目的のことです。今回のケースでも、ひょっとしたらバンド側は『ブランド価値が下がる』と感じるかもしれませんが、不正の目的がある、とまでいうのは難しそうです。
とはいえ、諸々の要件を商標登録の審査官がどう判断するかは読み切れないこともあります。世間の注目を集めたことですし、今後の推移を見守りたいですね」