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ツナ⽸の⾍混⼊、1億円超の賠償命令うけた下請業者が猛反発「混⼊は直営でも起きていた」
はごろもフーズ本店(静岡市清水区、Googleストリートビューより)

ツナ⽸の⾍混⼊、1億円超の賠償命令うけた下請業者が猛反発「混⼊は直営でも起きていた」

⾃社のツナ⽸に⾍が混⼊したことで"炎上"し、ブランドイメージが傷ついたなどとして、はごろもフーズ(静岡市)が約8億9000万円の損害賠償を求めていた訴訟で、静岡地裁が下請け業者の興津⾷品(同)に対し、約1億3000万円の⽀払いを命じた。

共同通信などによると、⼭梨県内のスーパーで販売されていた「シーチキンLフレーク」からゴキブリのような⾍が発⾒されたのは約6年前の2016年10⽉。はごろも側は2017年11⽉、返品やコールセンター設置、CM中⽌などの対応に追われたと提訴していた。

興津⾷品の代理⼈をつとめる増⽥英⾏弁護⼠は「はごろも側から判決⽂の閲覧制限の申し⽴てがされており、詳細は⾔えない」としながらも「消費者に健康被害はない。間接的な損害を下請けに押し付けており、不当だ」として、今週中にも控訴する⽅針を明らかにした。

⼀⽅、はごろもフーズ広報担当者は弁護⼠ドットコムニュースの取材に対し「申し訳ありませんが、判決⽂を精査中のため、事実関係も含めてコメントは差し控えさせていただきます」と回答した。

●公表予定ではなかったのに"炎上"

⾍が⾒つかったのは、当時の約1年10カ⽉前に製造されたもので、同じロットの⾃主回収という形にはならなかった。増⽥弁護⼠によると、スーパーに申し出た消費者は納得しており、公表の予定はなかったのだという。

しかし、はごろも担当者とスーパー側がやりとりをする中で、はごろも側の対応に不信感を持った⼈物が報道に流したことで炎上する事態となった。⾍が⾒つかったのは1⽸のみだったが、はごろも側はパスタやフルーツ⽸詰など他の製品もすべて返品要求に応じる対応にシフトした。

はごろもが受注の90%以上を占めていた興津⾷品は、実質、廃業状態となった。⼯場を建て替えなければ、発注はしないと⾔われ、100⼈超の従業員は、はごろも側に引き受けてもらうようにしたが、数⼗キロ離れた⼯場に通えないなどの理由で⼤半が職を失った。

「どういう返品対応をするかは、はごろもが⾃主的に判断したことです。⼤企業の営業戦略のツケをすべて下請けに責任転嫁できてしまったら、中⼩企業は⽣きていけません」(増⽥弁護⼠)

●混⼊は直営含め別の⼯場でも起きていた

はごろも側は「衛⽣管理義務違反だ」と主張しているが、興津側は、各⼯場が衛⽣部⾨で競うコンペで表彰されたこともあり「衛⽣管理には努⼒しており、著しく汚いという事実はない」と反論している。

興津⾷品の社⻑によると、直営を含めた別の⼯場でも、これまで混⼊事案は起きていたという。事案が起きると、⼯場側が異物の内容に応じて「クレーム処理諸経費」の名⽬で⼀定の⾦額(数万円)を⽀払い、次善策などを⽰した上で、その後も取引が続く形だった。

社⻑は「50 年以上も取引していて、はごろもを信頼していた。しかし、トカゲの尻尾切りのようなことをされて悔しい」と話しているという。

●完全にクリーンはあり得るのか、消費者の意識問う

増⽥弁護⼠は、この訴訟は勝敗だけでなく、⾷の安全に関する消費者の意識を問う普遍的な課題も含んでいると説明する。裁判の中で、はごろも側は返品された商品を転売していたことが明らかになっている。

「もし⾍が⼊っている可能性があると考えているなら全て廃棄するはず。品質には問題ないと認識している証拠です。下請け企業は決して管理を怠っていたわけではありません。

⼤企業は『完全無⽋にクリーンなブランドイメージ』を守りたいのかもしれません。返⾦を求める全てに対応するのは過剰なカスタマーサービスではないでしょうか。努⼒した結果、ミスが出た時は、ありのままの事実を説明することこそ必要なのではないでしょうか。

興津は年間約5100万個のはごろもの⽸詰を作っていました。クリーンルームで完全無菌状態にするなど対処したとしても、髪の⽑1本でもゼロにするのは⾄難の業です。コストとリスクはバランスです。完全を求めるならば、ツナ⽸の価格が10倍や20倍になるかもしれません」

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