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「釣り銭カード」発行のスーパーが倒産――なぜ1万人の客は「債権者」になったのか?
電子マネーの普及などによって、小銭を利用する人は減ってきている。

「釣り銭カード」発行のスーパーが倒産――なぜ1万人の客は「債権者」になったのか?

スーパーが倒産し、買い物客1万3000人が債権者に――。大阪府南部で展開するスーパーマーケットの倒産をめぐり、こんな驚きのニュースが流れた。大量の「債権者」が生まれた背景には、釣り銭をためる「カード」の存在があった。

産経新聞の報道によると、このスーパーでは、100円未満の釣り銭を客から預かり、合計2000円をためると、2500円分のギフト券と交換できるカードを発行していた。倒産の際に、カードの利用者名簿が見つかり、財産上の請求権があるとみられる買い物客に倒産を知らせる文書が郵送されたという。

なぜ買い物客は、債権者になったのだろうか。また、一般的に普及している、買い物金額に応じたポイントサービスの場合も、同じような事態が発生する可能性があるのだろうか。浮田美穂弁護士に聞いた。

●買い物客がカードに貯めた「釣り銭」の位置づけは?

「釣り銭を貯めるカードは、平時は残高の返金を予定していないものと思われますので、鉄道のICカードを受け取る際に支払うような『預り金』とは異なる位置づけでしょう」

では、どう考えればいいのだろうか。

「本来、釣り銭は、レジで買い物客に返還されるべきものです。今回のカードでは、釣り銭を2000円貯めれば、2500円分のギフト券と交換してもらえるので、買い物客はギフト券の代金の一部を『前払い』していると考えられます。

そのため、ギフト券と交換できなかった釣り銭については、前払い金の返還を求める権利があり、債権者として返金請求ができます」

買い物金額に応じてポイントが貯まる一般的なサービスの場合も「前払い」と考えることはできないのだろうか。

「一般的なポイントサービスも、値引きを受けられたり、商品と交換することができ、買い物客が経済的なメリットを受けることができるのですが、買い物客はポイントを購入しているのではなく、あくまでも商品を購入しています。

ポイントは買い物客の購買意欲を高めるために、企業がサービスとして買い物客に付与するものなので、『前払い』とは言えません。ですから、買い物客は、債権者として返金請求をすることはできないでしょう」

このように浮田弁護士は話していた。ただ、今回の「釣り銭」カードの場合も、「債権者」とはいえ、実際にお金が分配される見込みは少ないとみられている。カードの種類に応じて、きちんとリスクを理解しておいたほうが良さそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

浮田 美穂
浮田 美穂(うきた みほ)弁護士 弁護士法人兼六法律事務所
2002年、弁護士登録。2010年度金沢弁護士会副会長。著書に 「ママ弁護士の子どもを守る相談室」(2013年、一万年堂出版)。

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