SE(システムエンジニア)の働く環境について考える「SE労働と健康研究会」(会長=田村昭彦医師)は7月3日、厳しい労働状況の改善を図り違反の摘発・是正を求める厚生労働大臣あての要請書をまとめ、発表した。
同日に東京・霞が関の厚生労働省で開いた会見で、田村会長は「SE労働者はうつ病などの精神疾患になることが目立つ。個々人ではなく構造的な問題ではないか」と述べた。
●仕様変更あるのに納期は「厳守」
田村会長は、SEが過重労働になりがちな背景として以下のことを挙げた。
・システム開発を行うなかでユーザー企業の都合で仕様変更がたび重なる ・納期は決められたままで「厳守」とされる ・開発に携わる人的リソースが不足している ・SE労働者への教育が十分でないのに、重要なシステム開発をいきなり任されることがありミスマッチによる精神的負担がある
そのうえで、実際にSEが働いている現場では「偽装請負」やそれに近い状態があることも指摘された。
●「4人に1人」が月80時間以上の残業
東京都内に住む無職男性(33)は2012年、未経験でIT企業に入社。入社に際しての研修直後からプロジェクトを担当させられ、十分な教育は得られなかったという。
2年目に担当したシステム開発の仕事をきっかけに、うつ病を発症。このころ、多いときで月170時間の残業をしていたという。男性は会見で「IT業界では長時間労働が蔓延しており、精神疾患を抱えながら働いている人は多い。改善する必要がある」と話した。
また、小規模なソフトウェア会社の正社員だった女性も会見に同席した。この女性の場合、客先に常駐して働くスタイルだった。勤務会社から「社名を名乗らないで」と言われたこともあり、偽装請負と思ったことが何度もあったという。
電算機関連労働組合協議会が2018年に組合員に実施したアンケートでは、「4人に1人」がピーク時には月80時間以上の残業をしていると回答した。同様に、「4人に1人」が長時間残業のために「いつも疲れている」(慢性疲労)と訴えたという。