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大雪で上司が職場近くに宿泊予約、社畜ぶりに「吐き気」…宿泊指示されたらパワハラ?
都心部で積雪があると、交通機関が麻痺することがある(Emie/PIXTA)

大雪で上司が職場近くに宿泊予約、社畜ぶりに「吐き気」…宿泊指示されたらパワハラ?

この冬は雪国だけでなく、都心部でも積雪して、交通機関の乱れが生じた。ラッシュに備えて、早めに出退勤した人も少なくないだろう。だが、世の中には「雪で遅刻」という言いわけが、許されない会社もあるようだ。

●「私は職場近くのホテルに予約をしています」

大手掲示板「5ちゃんねる」(旧2ちゃんねる)に掲載されていたメール文面が、このほどツイッター上で話題になった。その件名は「言い訳厳禁!」で、職場の上司(その会社の本部長)から送られてきたというものだ。

「本日は関東で積雪が見込まれています。これにより、退勤時間帯に交通機関の乱れが発生する可能性が高いようです。帰宅途中で事故、怪我のないよう安全第一でお願いします」

ネット掲示板での書き込みということもあり、ウソかホントか検証のしようがないが、拡散されている情報からすると、都心部で大雪を記録した1月22日のことのようだ。一見すると、社員の安全を気遣う内容だが、ここから核心に入る。

「もちろん、明日の朝に『昨夜の雪で帰宅できず遅刻しました』といった言い訳をすることがないようにお願いします。社会人は結果がすべてです。ちなみに、私は万が一の事を考えて、職場近くのホテルに予約をしてあります」

●大雪による交通機関の乱れで「遅刻」は労働者の責任じゃない

3万回以上リツイートされたツイートは「こんな気持ち悪いメール、吐き気がする」というコメントが付されている。都心部で大雪が降り、交通機関に乱れが出た場合、どうしても定時に出社できない場合がある。法的にはどう考えればいいのだろうか。

労働問題にくわしい白川秀之弁護士は「労働者は、始業時刻に間に合うように出勤する義務があります。ただし、大雪や台風による交通機関の乱れなど、通常の手段で定時に出勤できない場合、出勤できなかったことについて、労働者に責任はありません。減給などのペナルティを課すことはできません」と解説する。

●不利益を与えるようなことになれば、パワハラにあたる可能性

今回話題になったメールからすると、差出人(本部長)は会社近くのホテルを予約している。社会人、しかも本部長という役職となれば、どうしても欠席できない会議があるのかもしれない。だが、大雪の前日とはいえ、会社近くのホテルに、平社員も宿泊するように促すことはいかがなものか。

「就業規則に遅延が予想される場合に、ホテルに宿泊するように指示をすることができる規程があれば、メールのような指示をすることもできるかもしれません。しかし、本来は自由なはずの退勤後の労働者を場所的に拘束するものなので、そのような指示が許される場合は極めて限定的になると思います」(白川弁護士)

こんなメールが送られてきて、心理的プレッシャーを受ける人は少なくないかもしれない。「吐き気がする」というのもわかる。白川弁護士は「メールそのものがパワハラにあたるといえませんが、悪天候で遅刻せざるを得なかった労働者に対して、不利益を与えるようなことがあれば、パワハラになりうるでしょう」と指摘していた。

【情報募集!】弁護士ドットコムニュースでは、「職場のパワハラ」「違法なルール」に関する取材を続けています。「上司から暴言を受けている」「遅刻をしたら土下座を要求される」「バイトの制服を自腹で買わされた」「金額があわない時に自腹で補填」などの体験や目撃談がありましたら、以下からLINE友だち登録をして、ぜひご連絡ください。

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(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

白川 秀之
白川 秀之(しらかわ ひでゆき)弁護士 弁護士法人名古屋北法律事務所
2004年弁護士登録。一般民事事件を幅広く行っておりますが、労働事件を専門的に取り組んでおります。日本労働弁護団常任幹事、東海労働弁護団事務局長、愛知県弁護士会刑事弁護委員会

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