平昌五輪のアイスホッケー試合会場に2月14日、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長のそっくりさんが、北朝鮮の「美女応援団」の前に突然現れ、話題になった。
ロイターやAFPの報道などによると、そっくりさんはハワードXと名乗っているそうだ。美女応援団の前で、手を振ったり、選手の応援で使われている統一旗を振ったりしたところ、警備担当者らによって引き離され、会場から退場させられた。しかも、試合中は警察署内に拘留されていたという。
ハワードX氏は「私の顔は政治的過ぎる。でもこの顔で生まれたのだから、この顔で生きていかなくてはならない」と話しているという。
悪ふざけのようにも思えるが、日本の法律で考えた場合、ハワードX氏を退出させることにはどんな根拠があるのか。西口竜司弁護士に聞いた。
●政治的な言動は禁止されているが…
「退出させるための根拠としては、施設管理権が考えられます。施設管理者のルールに従うことができない場合に、退場させることができるというものです。
例えば、Jリーグをイメージしてみるとわかりやすいでしょう。Jリーグでは、共通観戦マナー&ルールが定められています。観客はこのルールを守ることを前提に競技場に入場しています。観客がこのルールに従わない場合、退場させることも認められています。
退場の理由の1つが、政治的な言動や人種差別的な発言ですね。これは実際に問題になったことがあります」
ーー国際オリンピック委員会の「オリンピック憲章」でも、「オリンピック区域、 競技会場、 またはその他の区域では、 いかなる種類のデモンストレーションも、 あるいは政治的、 宗教的、 人種的プロパガンダも許可されない」と定められている。これに違反しているということか。
「もし、特定の政治的な主張を繰り返すなどした場合、違反することになるでしょう。ただ、ハワードX氏の場合は、顔が似ている、ということだけなので、かなり微妙なように思われます。
ハワードX氏は統一旗を振っていますが、今回は南北合同チームということで、美女応援団など他の観客も振っているものですので、彼の行動だけを問題視することは、なかなか難しいのではないでしょうか」
●明らかに迷惑をかける行為
ーーでは、退場させることには問題があるということか。
「そういうわけではありません。他の観客に迷惑のかかる行為をしていると考えられるからです。
先ほど紹介したJリーグの共通観戦マナー&ルールでも、『試合の運営または進行を妨害し、他人に迷惑または危険を及ぼし、若しくはそれらおそれがあると警備従事員が認める行為をすること』が禁止されています。
このようなルールについては、オリンピックの競技場においても同様に定められるものと考えられます。
今回の例でいうと、ハワードX氏が意図的に美女応援団の前に行き、手を振ったり、統一旗を振ったりすることは、明らかに迷惑がかかっており、現場の秩序を乱す可能性が高いため、退場もやむを得ないでしょう。
オリンピックは選手が必死で努力してきたことの集大成の場です。外野の人間がかき乱すのはいかがなものでしょうか。選手の皆さん、夢をありがとう。また、頑張って下さい」