昼夜問わず社長からメールやメッセンジャーで業務連絡を求められたり、暴力行為を受けたりして、うつ病を発症したとして、東京・六本木にあるコンサル会社の男性社員(30代)が、地位保全や賃金の支払いを求める仮処分を東京地裁に申し立てた。申立は、12月25日付。男性の代理人は「24時間拘束されている証拠が克明に残っている。現代の労働実態を示す事案だ」と話している。
●椅子を投げるなどの行為が、日常茶飯事にあった
男性の代理人をつとめる増田崇弁護士によると、この会社は、都道府県などから委託を受けて、伝統産業(有田焼や笠間焼など)のマーケティングや商品開発のコンサル事業をおこなっている。また、顧客から委託を受けて販売する店舗も運営している。男性はコンサル部門のリーダーをつとめていた。
男性が入社した2015年12月以降、社長やその妻(役員)から、昼夜を問わず、土日を含めた業務時間外でも、メールやFacebookメッセンジャーで、業務連絡が送られてきた。少しでも返信が遅れると、さらに「レスポンスが遅い!」「既読したら返信してください」といった連絡があったという。これらに対応することを義務づけられている状況で、2016年9月のサービス残業は、1カ月120時間に上ったとしている。
また、この会社では、社長による暴言のほか、椅子を投げられるなどの行為が日常的にあったという。男性は2016年4月、イベント会場のポスター掲示枚数が少ないという理由で、背後から社長に頭を殴られるなどし、うつ病を発症。2016年10月から休職している。
男性は12月26日、東京・霞が関の厚生労働記者クラブで会見を開いて、「労働環境としては、常に拘束されている状況だった。暴力や罵倒・恫喝、金銭的制裁などがあって、体調を崩した。同じ部署で働いている人も、つらい思いをしている人がいる。伝統産業に携わっている人たちを裏切っている」と話した。
増田弁護士によると、この男性のほかにも、会社直営店の店長だった50代男性が12月25日付で、地位確認を求める労働審判を申し立てた。50代男性は、高額商品が万引きされたことがきっかけで社長から叱責され、降格処分を受けたほか、給料も半減されたため、退職に追い込まれたと主張している。