会社の後輩女性に根も葉もない噂を流されて困っています――ネットのQ&Aサイトに、こんな男性サラリーマンの悩みが投稿されている。
投稿によると、男性は20代後半で、噂の出元は最近同じ部署になった後輩の女性。女性は「(一緒に出張した際に)夜、(男性が)携帯にしつこく電話してきた」「必要がないのに2人きりで残業をするよう迫られた」などと、職場で同僚に触れ回っている。他人が聞けば、男性が「セクハラまがい」のことをしていると思われかねない内容だが、男性によれば電話や残業は業務の一環で、私的な意図はないという。
もし本当に後輩の女性が、こんな「根も葉もない噂」を広めているのだとしたら、裁判で慰謝料を請求できるのだろうか。白川秀之弁護士に聞いた。
●「名誉毀損」で慰謝料をもらえる
「『夜、携帯にしつこく電話された』『必要がないのに2人きりで残業をするよう迫られた』という女性の話は、男性が女性にセクハラしたという印象を与える内容です。職場にこんな噂が流されれば、この男性の社会的な評価は低下してしまうでしょう。
このように、人の社会的評価を下げる事実を不特定多数の人に言えば、名誉毀損にあたります。後輩の女性には民法709条の不法行為が成立し、男性は慰謝料を請求することができるでしょう」
――刑法には違反しないの?
「刑法の名誉毀損罪にも該当します。ただし、職場内の噂程度では、なかなか警察は動かないと思います。
女性が慰謝料の支払いに応じない場合には、民事訴訟をする必要があります。また、民事訴訟で勝つためには、名誉毀損があったことを男性側が証明しなければなりません。後輩の女性が噂を流したことを証言してくれる人を確保するなど、証拠を集めておく必要があります」
――慰謝料の金額は?
「後輩女性の行為は、男性社員の働く環境を悪化させる行為ではありますが、社内というある程度限られた空間での噂で、内容もそれほど悪質ではありません。裁判で勝訴しても、慰謝料の額は多くて数十万円程度にとどまるのではないかと思います。
そういった事情を考えると、まずは上司に根も葉もない噂を流されている事実を申告し、上司から後輩女性に注意してもらうことが有効なのではないでしょうか」