タクシー会社・国際自動車(東京都大田区)に勤務する運転手14人が、実質的に残業代などの割増賃金が支払われない賃金規則は無効だとして、未払い賃金の支払いを求めた裁判で、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は2月28日、規則を無効とした二審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻す判決を言い渡した。
判決文などによると、同社の賃金規則では、運転手に、基本給のほかにタクシーの売上に応じた「歩合給」が支払われることになっていたが、歩合給を計算する際、残業代などに相当する金額を差し引くという規則があった。
一審・二審は、この規則は、割増賃金の支払い義務について定めた労働基準法37条の趣旨に反し、公序良俗違反で無効だとして、会社に計約1460万円の支払いを命じていた。これに対して最高裁は、規則について、「当然に同条の趣旨に反するものとして公序良俗に反し、無効であると解することはできない」とし、有効か無効かを改めて高裁で審理するべきだとした。
●「いくら残業しても賃金が変わらないような規定は間違っている」
判決後、東京・霞が関の厚生労働省記者クラブで開かれた会見で、弁護団の指宿昭一弁護士は「勝訴でも敗訴でもない、ドローな判決だと考えている」と述べた。「働いても賃金が増えない規則は、常識的におかしいと誰もが思う。それを公序良俗違反だと大鉈を振るったのが一審と二審だった。最高裁の判決は、規則が労基法37条に違反するかどうかを、より緻密に判断してほしいということだと考えている」。
指宿弁護士は、「最高裁の判決を手がかりに、いくら残業しても賃金が変わらないような規定は間違っているとしっかり主張して、高裁で勝利判決を勝ち取りたい」と述べていた。