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「変化に適応できない企業はダメ」 現役東大生が教える「ブラック企業」の見分け方
東京大学経済学部の大熊将八さん

「変化に適応できない企業はダメ」 現役東大生が教える「ブラック企業」の見分け方

就活シーズンの本番を迎える中、現役東大生が書いた異色の「就活本」が注目を集めている。東京大学経済学部4年の大熊将八さんが書いた小説「進め!!東大ブラック企業探偵団」(講談社)だ。発売されたのは、今年2月24日だが、東大生協(本郷)によると、2月売上げランキング(就活関連)で1位となった。アマゾンの「労働」カテゴリーでも、3月25日現在1位となっている。

本のストーリーは、登場キャラクターの東大生たちが、企業の公開情報などを手がかりに、その裏側にある実態をあばいていくというものだ。若者向けのライトノベル調の文体で、とても読みやすい。また、「外食」や「メーカー」など、実在する企業の公開情報からつくったグラフも盛り込みながら、企業分析の基本を難なく学べるかたちになっている。

大熊さんは東大経済学部に在籍しながら、「武器としての決断思考」(星海社)などの著書で知られる京都大学客員准教授の瀧本哲史さんが主宰する自主ゼミで、企業分析にかんする手法を学んだ。

テレビや新聞などのメディアで、当たり前に耳にするようになった「ブラック企業」。この春に就活をしている学生たちにとっても、大きな関心ごとの一つだろう。どうやって「ブラック企業」を見抜けばいいのだろうか。大熊さんに聞いた。

●「人に投資できなかったり、変化に適応できない企業はブラックだ」

――どうして「ブラック企業」に着目したのでしょうか?

僕の実家はものすごく貧乏だったので、子どものころから「職にあぶれたくない」「ブラック企業にいきたくない」という意識が強くありました。ただ、瀧本ゼミに参加するまでは、「某居酒屋チェーンがヤバい」くらいの情報しか持っていませんでした。

大学3年のときに立ち上げから関わった瀧本ゼミでは、株式分析をテーマにさまざまな企業について調べました。株式分析とは、ざっくりいうと、ある企業の株価が上がるかどうかを分析するというものです。

株価は、市場の予測を裏切ったときに変動するので、株式分析には企業の実態を調べる「企業分析」が前提になります。そのゼミで、たまたま僕が担当したいくつかの企業が、ブラックだったんです(笑)。

――ブラック企業とは、どういうものなのでしょうか?

企業はさまざまな努力をしていますが、他社の商品やサービスと差別化できないと、人件費を切り詰めはじめます。

また、既存の事業があまり強すぎると、にっちもさっちもいかなくなった場合、業態転換がうまくできず、社員を大切にできなくなります。

だから、人に投資できなかったり、変化に適応できない企業はブラックだと思います。

●就活にも「企業分析」は有効なのか?

――どうやって、ブラック企業かどうかを見分けるのでしょうか?

基本的には、公開情報にもとづいて分析します。たとえば、株式上場している企業はかならず、経営状況を書いた「有価証券報告書」を公開しないといけません。その情報を読み解くだけでも、いろいろと見えてきます。

たとえば、売上や利益が伸びているけれど、キャッシュフローが悪い、つまりお金がどんどん外に出て戻ってこない企業があります。そうしたことも、有価証券報告書に含まれている「キャッシュフロー計算書」を見れば、一目瞭然だったりします。

――企業分析を活用すると就活はうまくいきますか?

個人的な話をすると、僕はメディア系企業に内定したんですが、ある程度は企業分析を活用しました。だけど、就活に関して大事なのは「コネをうまく作ること」だと思います。

コネというと、「お父さんが◯◯会社の重役で・・・」みたいに、うさん臭くて、卑怯なことのように感じるかもしれませんが、そういう話ではありません。簡単にいうと、自分の努力によって人間関係を築き上げることです。たとえば、「大熊くんは学生なのにいろいろ考えていて、面白いね」と言ってくれる人を増やすことです。

そうすると、「もっと企業のことを教えてあげようか?」と声をかけてもらえたり、業界関係者の集まる場に呼んでもらえたりと、いろいろな会社のことをくわしく知ることができます。

――企業分析はあくまで入り口ということですね?

そうです。ただ、その分析がずれているとダメなんです。わけのわからない企業とコネを作っても仕方がない。だから、「この企業は将来伸びるのか?」とか「この業界には将来性があるのか?」と分析する必要があるのです。

●「就活生は氾濫する情報で消耗している」

――大熊さんの就活は順調だったんでしょうか?

実は、大学3年のときの就職活動で、外資系企業ばかり受けて、ぜんぶ落ちたんです。それまで、論理的に物事を考えるという経験がほとんどなかったからです。それに、面接で「大学時代に頑張ったことは何ですか?」と聞かれても、まともに答えられないありさまでした。

僕は高校まで水泳を頑張っていたんですが、大学時代はその時点で何も誇るものなかった・・・。だから、このまま自分を偽って、何か頑張った話をでっちあげても後悔すると考えて、その年の就活はすぐにやめることにしました。その後、大学からはじめた競技ダンスで「日本一」になるまで本気で取り組んで、翌年にもう一度、本当に興味がわくメディア業界で就活しました。

――最近の就活は学生の負担が大きいといわれています。どう思いますか?

いまの就活は本当にバカバカしいと思います。多くの人は人生に一度きりしか、新卒就活をしません。だから、就活生はどうしても情弱にならざるをえず、氾濫する情報で消耗しきっています。

たとえば、ある内定者が「OB訪問なんかしなくても受かるよ」と主張したとしても、その人がもう一回就活したとき、本当にOB訪問しなくても受かるかというと、よくわからないですよ。たまたま一回成功したことが、普遍的なファクトとして語られることが多い。だけど、ただの思い込みの可能性があります。

一方で、企業分析のように公開情報をきちんと読み解き、ファクトから物事を考えるようになれば、全然違った企業の見方ができるようになります。そうした正しい努力をする人が増えていくと、就活も変わっていくんじゃないかと思います。

この本で取り上げた「ブラック企業」というのは、一大テーマです。就活生や第二新卒のほか、「自分の会社がブラック企業にならないように」と考えている上の世代の人にも手にとってもらいたいです。

(了)

(弁護士ドットコムニュース)

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