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「お前の価値は1円だ」と居酒屋店長に罵倒された 「学生ブラックバイト」の実態公表
調査結果を報告する「ブラック企業対策プロジェクト」のメンバーら

「お前の価値は1円だ」と居酒屋店長に罵倒された 「学生ブラックバイト」の実態公表

大学教授やNPOなどでつくる「ブラック企業対策プロジェクト」は4月28日、厚労省記者クラブで会見を開き、過酷な長時間労働などを強いられる大学生の「ブラックバイト」に関するアンケート調査の結果を報告した。

調査を行った法政大学の上西充子教授は「ブラックバイトの学生は、店舗の都合で、勝手にシフトに入れられたり、残業をさせられたりしている。人件費を抑えようという意識が強い居酒屋バイトは、特にその傾向が強い」と述べ、特に「居酒屋バイト」を問題視していた。

●居酒屋バイトの90.7%が深夜時間帯に勤務

調査は2014年7月、全国27の国公私立大学で授業などの際に調査票を配布して、約4700人から回収した。その結果、76.4%にあたる3593人が大学生になってからアルバイトを経験していたことが分かった。

このうち、就業時間の記載のある学生2150人を分析したところ、「深夜時間帯(22時〜5時)に勤務がある」と答えた学生は、全体で42.8%なのに対し、居酒屋バイトでは90.7%に達した。また、現在、居酒屋バイトをしていると回答した228人のうち、「休憩が取れていないことがある」と回答した人の割合が48.2%と、全体平均24.5%の倍近くにのぼった。

さらに、深夜勤務を行っている学生は、職場から労働条件を記載した書類を渡されていない、募集内容と実態が違うなど、職場の管理が行き届いていない傾向が強かったという。

記者会見では、ブラックバイトに苦しむ学生からの労働相談に応じている「ブラックバイトユニオン」に寄せられた相談事例が紹介された。

個人経営の居酒屋で働く大学生の男性は、週5〜6日でシフトに入っている。店長にシフトを減らしたい、休みたいと告げると、「お前に休む権利はない」と怒鳴られるため、やむを得ず週5〜6日の勤務を続けている。

勤務時間は、午後7時から午前2時、休日は午前5時までで、休憩はない。しかも、営業終了後は他の店員を車で自宅まで送り届けなければならないため、仕事から解放されるのは朝7時ごろになることもあるという。男性はその後、朝10時すぎに大学へ向かうが、授業中はほとんど寝てしまっているそうだ。

男性は店長に叩かれることが頻繁にあり、さらに「お前の価値は1円だ」「お前の人生なんて塵と同じだ」などと罵倒されるため、恐怖心で店長に反論できず、理不尽な扱いを受けながらも仕方なく働いているそうだ。

●ブラックバイトを辞められない理由

明らかに不当な扱いを受けているのに、なぜ学生はブラックバイトを辞めないのか。アンケート調査を行った中京大学の大内裕和教授は、「『バイ活』『人間関係の構築』『労働の高度化』が、学生がブラックバイトを辞められない原因」と語る。

「バイトの面接では、『授業があるからあまりシフトに入れない』と言うとすぐに落とされ、10社以上平気で落ちている学生も多い。今のバイト先を辞めれば、そんな『就活』ならぬ『バイ活』でまた苦労することになる。

辞めてしまうと、人間関係を一から構築するのも大変だ。さらに居酒屋は単純作業ではなく、ある程度高度な業務を求められるので、違う職場で違う仕事のやり方を新たに覚えていくのが大変だという理由もある。

そもそも自分のバイト先がブラックだと気づかず、『他の職場も同じだ』と思っている学生も多い。ただ、ブラックバイトと気づいていても、そうした足かせのせいで、辞めて新しい職場にいくことを躊躇している学生は少なくない」

大内教授はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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