残業代不払いなどの違法行為を繰り返すブラック企業の「新卒求人」は、ハローワーク(公共職業安定所)で受け付けませんーー。そんな内容を定めた「青少年雇用促進法案」が3月下旬、政府によって国会に提出された。
ハローワークはこれまで、職業安定法に基づき、原則としてすべての求人を受け付けなければならなかった。しかし、今回の法案が可決されれば、特例措置として、ブラック企業からの新卒求人を受け付けないことが可能になる。
若者の雇用支援は大きな課題になっているが、今回の法案はどのような効果をもたらすことが期待されるのだろうか。労働問題にくわしい白川秀之弁護士に聞いた。
●「ブラック企業対策の観点からも一定の効果」
「ブラック企業は、若者をはじめ、働く人間を過酷な労働に追い立て、モノのように使い捨て去り、使いつぶします。
今回の法案は、若者の雇用対策だけではなく、ブラック企業対策の観点からも、一定の効果があるといえます」
白川弁護士はこう切り出した。どのような理由があるのだろうか。
「ブラック企業対策としては、長時間労働などの違法な働かせ方に対して、行政による是正措置がおこなわれることも必要ですが、それ以上に、離職者数など、ブラック企業にあたるのか否かの情報が提供され、ブラック企業が労働市場から淘汰されることが重要だからです」
効果は十分なのだろうか。
「不十分な点はあります。まず、今回の法案は、新卒求人のみを対象としており、中途採用については改善されていません。
また、最近はハローワークではなく、リクナビやマイナビといった民間の就職活動サイトを通じた採用の割合が高い状況にあります。ハローワークだけ新卒求人を制限するのでは、効果は限定的なものにすぎないでしょう」
今回の仕組みはどのような改善の余地があるのだろうか。
「たとえば、企業に対して新規採用者数と退職者数を開示することを義務づけたり、ハローワークに対して、『就職を検討している会社がブラック企業に該当するのかどうか』を問い合わせることができる情報提供の仕組みを作ることも有効でしょう。
また、ブラック企業の募集では、賃金総額に一定の残業代を含んでいたり、誇大広告的な情報を出しているケースもたくさんあります。賃金形態や賃金の種類など、より詳しい情報を求人募集に明示させることも重要になるでしょう」
白川弁護士はこのように述べていた。