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知的障害の男性に「幼稚園児以下だ」 4年にわたる「職場いじめ」受けたとして提訴
原告の男性は母親とともに記者会見に臨んだ

知的障害の男性に「幼稚園児以下だ」 4年にわたる「職場いじめ」受けたとして提訴

4年間にわたるいじめや暴言によって退職に追い込まれたとして、20代の知的障害の男性が3月25日、関東を中心に展開するスーパーマーケットチェーンと直属上司に対し、損害賠償金585万1800円を求めて、東京地裁に提訴した。

提訴後、東京・霞ヶ関の司法記者クラブで開かれた記者会見に、男性は母親と代理人の弁護士とともに出席した。「幼稚園児以下だと言われて、すごく辛かった」「私みたいな思いを同じ障害者にしてほしくない」と、男性は語った。

●古株のパート社員に受けた暴行と暴言

会見や訴状によると、男性は3歳のときに患った病気の後遺症で、重度の知的障害がのこった。特別支援学校の在学時に3回ほど、今回のスーパーマーケットチェーンで職場実習を経験した後、2008年4月1日に入社した。横浜にある支店のベーカリー部門に契約社員として配属された。

勤務時間は午前8時30分から午後0時30分までの1日4時間で、パンの品出しや袋詰めなどが主な作業だったという。ベーカリー部門には、この男性を含めて5〜6名ほどの従業員が配属されており、勤務年数の長い50代の女性パート社員Sさんがマネジャーとして現場を取り仕切っていた。

男性は入社当初の2008年5月ごろから2013年3月31日に退職するまで4年近くにわたって「虐待行為を受けていた」と主張するが、その加害者が、Sさんである。Sさんは従業員に対する接し方が厳しく、ベーカリー部門の従業員は全員、逆らえない状況だったという。

「パン詰めをしていたときに、腕を引っ張り、胸ぐらを掴んだ」「作業中、腕に肘鉄をした」ーー。訴状には、Sさんが行ったとする暴力行為の数々が書き連ねてある。

また、Sさんは「あんたの仕事は幼稚園児以下なんじゃないの」「馬鹿でもできるでしょ」「ちゃんとやらないと蹴る」といった暴言もたびたび発し、客の前で男性を怒鳴ることもあったという。

●相談が逆効果に・・・「告げ口したの?」

こうした継続的な暴行・暴言によって精神的に追いつめられた男性は、母親とともに東京都内の障がい者生活支援センターにも相談した。

センターの担当者を通じて、スーパー側に職場環境の改善や、配置換えを求めた。しかし、度重なる要請にもかかわらず、配置換えは行われなかった。それどころか、相談を聞きつけたSさんから「告げ口したの?」と嫌味を言われるなど、逆効果だったという。

そのため、男性は精神的に追いつめられ、爪や指先を血が出るまで噛んでしまう自傷行為に及ぶようになっていく。指からは常に出血しており、両手の指すべてに絆創膏を貼っていた時期もあったそうだ。男性は、就業を続けられない精神状態になり、2013年3月31日付けで退社した。

●被告の会社側は「訴えを起こされて困惑している」

原告代理人の黒松百亜弁護士は、会見でこの裁判にかける思いを語った。

「障害があることで、できないことも、不便なこともあるが、障害特性を理解して、どう教えていくか考えれば解消できる。小さな理解や工夫を積み重ねることで、障害がある人とない人の双方にとって、より良い職場環境をつくることができたはずだ。

同社は障害者を受け入れていながら、『ばかだ』『幼稚園児以下だ』とののしる上司の下に配属し、被害事実を認識していたにもかかわらず、具体的な改善策を何も取っていなかった。これは、企業における障害者差別、障害者いじめにほかならない。

同様の被害にあって苦しんで、声をあげられない障害者も多くいるのではないか。この裁判を通じて、他の企業の人たちも、障害者への配慮として何ができるのか、共通の問題として考えてほしい」

同社の広報担当は弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「こういった形で訴えを起こされて困惑している。訴状を確認した上で、真摯に対応していきたい」と話した。

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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