子どもならともかく、大人になっても、会社に「風邪予防のため」だと手洗い・うがいを義務づけられてしまうことがある。そんな会社に勤める男性から「手洗い・うがいの時間は給与をもらえないの?」という質問が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。
この男性は、手洗い・うがいについても「義務なので当然、業務に必要な行為」だと考えて、9時前に出社してタイムカードを押してから、手洗い・うがいをしていた。ところが、上司から「出社したら、タイムカードを押す前に手洗い・うがいを行え」と命じられてしまったのだそうだ。
男性によると、出社してすぐの時間帯は「洗い場が少ないために10分くらい長蛇の列に並ぶことになります」ということで、その時間がタイムカードから外れるのは納得できない様子だ。この会社のように、手洗いやうがいが社員の義務とされている場合、それにかかる時間は、給与が発生する対象にならないのだろうか? 今泉義竜弁護士に聞いた。
●「労働時間」とは、上司の「指揮監督」のもとにある時間
「給与の対象となるかどうかは、その時間が『労働時間』といえるのかどうかで決まります」
今泉弁護士はこう切り出した。では「労働時間」とは、そもそもどんな時間をいうのか。
「労働時間とは、上司の指揮監督のもとにある時間をいいます。完全に労働から解放された自由な時間でなければ、『労働時間』になります」
では、業務以外でも「労働時間」とされるのだろうか。
「業務そのものではなくても、業務に必要な準備作業として義務づけられたことをしている時間も『労働時間』に含まれます。朝礼や掃除、制服への着替え、体操などが業務の準備として会社で義務づけられている場合や、『手待ち時間』『仮眠時間』などであっても必要が生じればすぐ対応することが義務づけられている場合には、『労働時間』にあたります」
となると、相談者の「手洗い・うがい」時間も「労働時間」といえるのか。
「ご相談の事例では、『手洗い・うがいを行う』ということが会社により義務づけられている以上、その時間は『労働時間』になります。
現実には、着替えてからタイムカードを押させているケースや、終業時間にタイムカードを押させてから、後片付けやミーティングをするといったケースをよく聞きます。しかし、このような手法は、時間外労働とみなされます。その時間分の給与を支払わないのは、違法といえます」
あなたの職場はどうだろうか? 「これはうちのルールだから・・・」そんな言い訳は通用しないようだから、必要に応じて、対策をとってほしい。
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