弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. 労働
  3. 「整形してるんですか?」職場で何度も聞かれうんざりする女性 ”悪気ない一言”がハラスメントになることも
「整形してるんですか?」職場で何度も聞かれうんざりする女性 ”悪気ない一言”がハラスメントになることも
KiRi / PIXTA(写真はイメージです)

「整形してるんですか?」職場で何度も聞かれうんざりする女性 ”悪気ない一言”がハラスメントになることも

「整形してるんですか?」。会社員として働く女性は、ハッキリとした顔立ちの美人だと評判なこともあり、職場の同僚や後輩の女性から、そう尋ねられることが少なくないという。

美しくなるための美容整形を公言する芸能人やインフルエンサーが増えている影響もあってか、一般の人でも整形を隠さないケースが見られるようになった。

そんな風潮もあり、尋ねてくる側は、顔の整形をポジティブな意味合いで捉えているのかもしれない。どこのクリニックで施術したのか知りたい、という関心の場合もあるだろう。

しかし、女性は、実際にはまったく整形していないにもかかわらず、「人工的な顔立ち」と指摘されているように感じ、前向きに受け止められない。毎回うんざりしているという。

職場で美容整形の有無を尋ねる行為は、ハラスメントなどに該当するのだろうか。企業法務にくわしい笹野皓平弁護士に聞いた。

●「整形している?」職場で聞いたら→ハラスメント

──「整形している?」という言動にはどんな問題が考えられますか。

職場の同僚などから「整形しているのか」と執拗に問われる行為は、法的な観点からみて、ハラスメントや不法行為に該当する可能性が十分にあります。

たとえ悪意がなく、褒めるつもりやポジティブな関心からの発言であったとしても、受け手が苦痛を感じ、職場環境が害されているのであれば看過できない問題になります。

特に今回のように、本人が否定しているにもかかわらず、繰り返し問いかけられる場合、その関係性や態様によっては「職場におけるパワーハラスメント(個の侵害)」や、相手の容姿に対する不必要な言及として「セクシャルハラスメント」に該当する可能性が高いといえます。

パワーハラスメントについては、(上司ではない)同僚や後輩による言動であっても、優越的な関係を背景にしたものと評価される場合があるため、注意が必要です。

●業務上の必要性は皆無 プライバシー権や人格権の侵害にも

──他に法的問題はないでしょうか。

そもそも、美容整形をしているかどうかは、個人の極めて私的でセンシティブな情報です。

業務上の必要性が皆無であるにもかかわらず、本人が望まない形でこうした私的な領域に踏み込むことは、プライバシー権や人格権の侵害にあたると考えられます。

また、こうした発言によって精神的な苦痛を受け、通院を余儀なくされたり、就労不能になれば、民法上の不法行為に基づく損害賠償を請求されるリスクまで考えられます。

●放置すれば企業が責任を問われることも

──企業の責任が問われる可能性もありますか。

企業側にとっても、放置できない問題です。事業主には、労働契約法などに基づき、従業員に対する安全配慮義務があります。

ハラスメントが横行する職場環境を是正せずに放置すれば、この義務を怠ったと評価され、企業自身が法的責任(債務不履行責任や使用者責任など)を問われるリスクが生じます。

企業としては、就業規則や研修を通じてハラスメント禁止を明文化するとともに、業務上の関連もなく「整形しているのか」と執拗に尋ねる言動が不適切であることを全社的に周知することが不可欠です。

あわせて、相談窓口の設置や、問題が発生した場合の調査・適切な是正措置といった迅速な対応も求められます。

●社内窓口や弁護士への相談 記録の重要性

──悪気がない言葉だとしても反論できず、不快感をため込んでしまう人へのアドバイスをお願いします。

もし現在、こうした問いかけに悩まされているのであれば、まずは社内の相談窓口や人事部へ相談することをおすすめします。

会社に相談することがためらわれる場合は、弁護士に相談する方法もあります。その際、いつ、誰に、どのような状況で何を言われたのかを記録しておくと、事実確認がスムーズになります。

立証の観点からは録音などの直接的な証拠が有用です。また、信頼できる同僚や家族に相談していたという事実(メールやLINEのやり取りなど)も、後に被害を裏付ける有力な証拠となり得ます。

かつてと比べて、美容整形に対する社会的な受容度は変化しているように思われます。しかし、だからといって個人の身体に関する話題へ安易に土足で踏み込んでよい理由にはなりません。

職場という公的な場だからこそ、互いのプライバシーを尊重する意識を持つことが、ハラスメントのない健全な環境づくりへの第一歩となります。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

笹野 皓平
笹野 皓平(ささの こうへい)弁護士 弁護士法人ブライト
平成23年弁護士登録(大阪弁護士会所属)。企業法務・事業再生等を中心に、個人の法律問題まで幅広く対応。近年は顧問弁護士として、法人クライアントへの予防法務の提供などに注力している。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では協力ライターと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする