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吉野家、ハラスメント対策を誓約 「生娘シャブ漬け」「外国人お断り説明会」で問題に
会見の横断幕(2023年5月24日/弁護士ドットコムニュース)

吉野家、ハラスメント対策を誓約 「生娘シャブ漬け」「外国人お断り説明会」で問題に

牛丼チェーン「吉野家」の男性従業員が5月24日、会社との間で和解協定書を締結したと公表した。締結は5月11日付。男性は人事評価に関わるシートを改ざんされるなどして、抑うつ状態で休業していた。

和解協定書は、吉野家が改ざんなどの事実を認めて、男性に謝罪する内容。個人間の問題だけにとどまらず、就業規則や社内規定に「ハラスメント・人権侵害・差別の禁止」を明記させ、ハラスメントに毅然とした対応をとることなどを誓約させている。

吉野家側と団体交渉を重ねてきた労働組合「東京管理職ユニオン」によると、こうした内容が和解協定に盛り込まれた背景には「生娘をシャブ漬け戦略発言」など数々の問題が取り沙汰されてきたことがあるという。

ユニオンの神部紅書記長は5月24日の記者会見で「歪んだ人間関係や差別、会社の構造的な問題に切り込み、改善を約束させなければ、同様の問題が繰り返されるだろう。吉野家が真にハラスメントのない会社として生まれ変わることを期待している」と述べた。

和解においては口外禁止条項がつかず、協定書も公開された。

●「自己評価をBにしたのに勝手にCに書き換えられた」

和解を発表したのは、吉野家本社(東京都)で専門職として働くAさん。Aさんによると、2019年5月頃に同僚から暴言を受けたほか、2021年10月に人事評価に関わる書類(課題設定シート表)に記載した内容が所属長によって書き換えられ、自己評価を「B」から「C」にされたという。

画像タイトル 会見したAさん

同月中に心療内科で「抑うつ状態」と診断されて以降、休職が続いている。その後、Aさんから「告発書」が提出されたことを受けて、会社側は「ハラスメント」調査を実施したが、「重大案件ではない」とされたそうだ。

Aさんはユニオンに加入し、人事評価の改ざんの謝罪や再発防止などをもとめて、昨年2月から団体交渉を実施してきた。

ところが、吉野家では、その数カ月後の2022年4月と5月に、当時の常務取締役による「生娘をシャブ漬け戦略」発言や、採用説明会を予約した大学生を外国籍と判断して参加を拒否するなど、立て続けに大きな問題が勃発した。

●団交の途中で、「シャブ漬け発言」など発生

ユニオンでは、Aさんの問題解決だけでは、また新たなハラスメントなどの問題が繰り返されるであろうと考え、ハラスメントや人権、ジェンダーに関する内容を含むコンプライアンス教育を実施することを和解において誓約させた。

Aさん側からのもとめを受けて、吉野家は「全従業員に対するハラスメントアンケート」をすでに実施しているという。結果が報告され次第、ユニオンがその内容を公表する見込みだ。

和解においては、人事評価シートの改ざんだけでなく、同僚からAさんに対して「語気が強い発言があった」ことも事実とされて、謝罪を受けたという。金額は非公表だが、一定の解決金も支払われる。

Aさんは「時代は令和ですから、昭和のように耐えるばかりの人生ではない。このような形で社会全体に一石を投じたかなと確信しております。こうした問題はこれからも起きるはずですが、もみ消すのではなく解明するのが大事だと思います」と述べた。

吉野家は取材に「本件に関しましては、お相手があることですので、当社から回答はできかねますことをご理解ください」とコメントした。

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