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2021年05月16日 09時45分

「これからの経営方針にあなたはついていけない」突然、早期退職を促された50代男性…抵抗できる?

「これからの経営方針にあなたはついていけない」突然、早期退職を促された50代男性…抵抗できる?
コロナの影響もあってか早期退職募集は相次いでいます(USSIE / PIXTA)

職場で突然、早期退職を促されたという50代男性から、断り方についての相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

男性の働く会社では、早期退職の募集があり、対象者全員と面談をおこなうと発表がありました。男性も年齢的に対象となり、面談で「これからの経営方針にあなたはついていけないと思われる。しかし年齢的にはまだ新天地で活躍できる」と転職支援会社を案内されました。

言い方はソフトではありましたが、事実上の退職勧奨でした。ただ、男性は「早期退職の条件は悪くはありませんでしたが、自らのライフステージを考えると辞めるわけにはいかない」と考えています。

相談者は、次回の面談で改めて退職の意思はないこと、転職支援会社に事前相談は行わないことを伝えるつもりですが、それにより自身の待遇が悪化することを心配しています。

今後、退職勧奨を強く促された場合、どのように交渉すれば良いのでしょうか。また断ったことで待遇を下げられた場合、男性は受け入れざるを得ないのでしょうか。岩井羊一弁護士の解説をお届けします。

●ポイント

・会社は無条件に労働者を解雇することはできない
・会社は一方的に労働条件を切り下げることもできない
・何回も呼び出し退職勧奨すること自体が違法となる可能性

●「あなたはついて行けない」だけでは解雇できない

——相談者は退職するつもりはないようです。このまま断り続けても良いのでしょうか

この方は、辞めるわけにはいかないと考えて、面談で改めて退職の意思はないことを伝えるつもりであるとのことです。これは正しい対応です。

労働者と会社は、雇用契約あるいは労働契約という契約関係を締結して会社で働いています。

労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。ですから、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である」と認められる事情がなければ会社は労働者を解雇することはできません。

会社は、たとえ本当にこの男性について「これからの経営方針にあなたはついて行けないと思われる」と思ったとしても、それだけでは解雇することはできないのです。

会社は、人員削減が必要な場合に、自己都合で退職するよりも良い条件をだして、自ら辞めてくれる人を募るということをします。希望退職の募集といいます。退職に応じてくれる人が少ない場合には、個別の労働者に退職を勧誘することもあります。退職勧奨といいます。

——退職勧奨は、断ることはできるのでしょうか

会社はあくまでも退職を勧めているだけですから、当然断ることができます。ですから、退職勧奨を強く促された場合にも、はっきり断ることが大切です。場合によっては、断ったことの証拠を残すために書面で退職勧奨を断る旨の通知を送付することも考えられます。

●退職勧奨に応じないなら不利益→違法

——退職勧奨に応じなければ不利益があると説明されたら、どうすれば良いですか

労働契約は契約ですから、使用者が一方的に賃金の減額などの労働条件を切り下げることはできません。同意なしに賃金が一方的に減額されれば、その差額について請求する権利があります。

勤務場所や勤務内容について、希望する仕事や勤務場所につかせてもらえない、あるいは一方的に本人の希望しない仕事や勤務場所に配置換えされるなどの不利益を課される場合にも、退職勧奨に応じないことを理由として行われれば、使用者の権利濫用であって違法であり、無効です。

そもそも退職しないと待遇を下げられるかもしれないと思わせるような退職勧奨が、違法とされる場合もあります。

退職勧奨の手段・方法が社会通念上の相当性を欠くもの、たとえば、被勧奨者が退職を拒否しているにもかかわらず何回も呼び出し、繰り返し勧奨して、応じなければ際限なく勧奨が続くのではないかとの不安感を与え、心理的圧迫を加え、被勧奨者の自由な意思決定を妨げるようなものは違法であって許されません。

退職しないと待遇を下げられるかも知れないと思わせるような言動を用いて行う退職勧奨も、その態様によって違法となる可能性があります。

違法な退職勧奨は損害賠償請求の対象になります。また、内容によっては差し止め請求の対象にもなります。

退職勧奨については、応じる義務がありませんから、はっきりと断ることが大切です。また、心配があれば、弁護士に相談するなどして、今の自分の置かれた立場に適したアドバイスを受けることをおすすめします。

取材協力弁護士

岩井 羊一弁護士
過労死弁護団全国連絡会議幹事、日弁連刑事弁護センター副委員長 愛知県弁護士会刑事弁護委員会 副委員長

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