全国転勤がある会社に入社したものの、結婚などを考えたときに頭を抱える人たちも少なくありません。ネット上には「どちらかが仕事を辞めないと結婚はムリそう」「結婚して家族を不幸にすると思ったので、退職を決意した」などの声もみられます。
中には、親の介護や病気などで転勤が難しくなり、悩んでいるという人も。弁護士ドットコムにも「全国転勤は絶対なのでしょうか」という相談が寄せられています。
相談者は入社後に病気が分かり、病院でしばらく治療を続けることになりました。そこで、会社側に治療を終えるまでは転勤できない旨を伝えると、「全国転勤できないのは会社のビジョンに合っていない。キャリアチェンジをした方が良いのではないか」と、遠回しに自己都合退職を促されたそうです。
別の相談者は、母の介護を理由に留まることを希望したところ「本当に介護なんかしているの」と怪しまれ、最後は諦めてしまったと打ち明けています。
全国転勤を了承して入社した場合、その後はどのような場合でも転勤を拒否することはできないのでしょうか。森本明宏弁護士の解説をお届けします。
●全国転勤を拒否できる場合もある
ーー全国転勤を了承して入社している以上、どのような場合であっても入社後は転勤を拒否することはできないのでしょうか。
全国転勤に了承して労働契約を結んだのであれば、使用者には転勤させるかどうかについて広い裁量権があります。業務上必要であれば、転勤命令には従わなければならないのが原則です。
ただし、転勤命令は労働者の生活に少なからぬ影響をあたえますので、無制限に許されるわけではありません。濫用にあたるような特段の事情がある場合には、転勤命令を拒否することができます。
ーー特段の事情が認められるのは、どのようなケースですか。
代表的なものとしては、以下の2つがあります。
1つ目は、他の不当な動機・目的をもって転勤命令がなされた場合です。具体的には、労働者を退職させる意図がある場合や、会社に批判的な労働者を排除する目的で転勤命令を出したような場合です。
2つ目は、労働者に不当な不利益を負わせる場合です。たとえば、親が病気で面倒を見る必要性が高い労働者を転勤させる場合などがこれにあたります。
このような特段の事情があるならば、まずは会社に事情を説明し、転勤命令の撤回を求めてください。それでも撤回しないのであれば、今後の会社との関係性などにも気を配る必要性があると思われますので、どのように対応すべきか弁護士にご相談ください。
(弁護士ドットコムライフ)