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ヤマハ音楽講師がユニオン結成 「レッスン外の仕事にも報酬払って」
ヤマハ音楽講師ユニオンのメンバー(2020年11月19日/弁護士ドットコム撮影)

ヤマハ音楽講師がユニオン結成 「レッスン外の仕事にも報酬払って」

ヤマハ音楽教室ではたらく音楽講師の男女7人が11月19日、労働組合「ヤマハ音楽講師ユニオン」を結成した。ユニオンはこの日、都内で記者会見を開いて、レッスン外に無報酬の業務があることなどの実態を訴えたうえで、ヤマハ音楽振興会と交渉しながら安心して働ける環境をつくっていきたいとした。

●きっかけは「コロナ禍」だった

ユニオンによると、ヤマハの音楽講師は、ヤマハ音楽振興会と委任契約を交わした「個人事業主」ということになっており、ヤマハと契約した楽器店(特約店)が運営する音楽教室か、直営店でレッスンしている。

ユニオン結成のきっかけは、ことしの「コロナ禍」だ。「ヤマハからの一方的な通達」によって、約3カ月間のレッスン休講が決まったが、実質的な補償はなく(見舞金のみ)、生活に大きな影響があったという。

こうした状況に疑問を抱いた音楽講師たちが、ズームの学習会を重ねながら、ツイッター・フェイスブックを通じたアンケート調査を実施。これまで顕在化されていなかった問題点について整理しつつ、ユニオン結成の準備をすすめてきた。

●「無報酬の仕事」も

ユニオンによると、ヤマハの音楽講師は、発表会の準備・本番などのレッスン外の仕事もあるが、基本的にはレッスンに対する報酬しか支払われておらず、ヤマハや特約店と対等な立場で交渉できないため、実質的に従属関係にあるという。

特約店によって事情はちがってくるが、ユニオンのメンバーで、関東地方の子ども向け教室で教えている20代女性によると、勤務時間、場所、指導方法などが、指定されているという。この女性は自分の経験として次のように話した。

「ヤマハ音楽教室ではさまざまなコンサートがありますが、その中でも規模が大きな発表会が年度末にあります。私が所属する特約店では、その発表会が3日間にわたりおこなわれて、1日あたりの拘束時間は10〜14時間ほどです。

その間、昼食時間は15分ほどもらえますが、それ以外は、生徒の誘導や舞台・音響のセッテイング、司会業務などで慌ただしく過ごしています。しかし、ヤマハからは一切謝礼がでません。

特約店からは3日分の謝礼として5000円をもらいましたが、時給換算すると100円ほどです。特約店が臨時で雇っているバイトには時給900円が支払われていると聞いて、あらためて講師の立場を考えさせられました。

また、発表会に向けての合同練習と呼ばれるサービスレッスンもあります。この合同練習はレッスン外で、ヤマハ音楽振興会から一切、報酬の支払いがありません。特約店からも支払いがありません。

ただ交通費を支払って、会場まで行って、何時間も無償でレッスンして、交通費を支払って帰るだけです」

●講師数は全国に約1万人

こうした問題に疑問をもっていた講師は少なくなかったが、ユニオンによると、レッスンを減らされるかもしれない、クビ(契約解除)になるかもしれないという不安などから、声を出して意見できなかったという。

ユニオンは、ヤマハに対して、(1)レッスン外の仕事に対して報酬を支払うこと、(2)仕事を原因とするケガや病気に対して適切な補償をすること、(3)コロナ禍など災害が生じた際の補償をすること、(4)個人事業主として、対等なコミュニケーションがとれること――をもとめていくとしている。

ヤマハの教室会場数は全国に約2700カ所、講師数は約1万人。ヤマハ音楽振興会は、ユニオンについて「マスコミ報道を通じてユニオンの結成を承知していること以外、コメントすべき事項はございません」としている。

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