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「人間不信になりかけた」漫画『聖闘士星矢』車田正美さん、元マネージャーらを提訴…約28億円賠償請求
漫画家の車田正美さん(2026年9月2日/東京・霞が関の司法記者クラブ/弁護士ドットコム撮影)

「人間不信になりかけた」漫画『聖闘士星矢』車田正美さん、元マネージャーらを提訴…約28億円賠償請求

人気漫画『聖闘士星矢』などで知られる漫画家の車田正美さんの著作権などを管理する関連会社3社が9月2日、長年にわたって経理などを任せていた元マネージャーの男性ら11の個人・法人を相手取り、約28億8600万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。

原告側は、男性が少なくとも2018年ごろから2024年まで、会社の資金を自身や自身が支配する関連会社の口座に無断で送金したり、本来支払われるべきライセンス料を自身が設立した別会社に振り込ませたりするなどして、計約46億8600万円の損害を与えたと主張している。

すでに約18億円を回収しており、今回の訴訟では残額の支払いを求めている。

車田さんは同日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた。四半世紀にわたって自身の執筆活動を支え、家族同然に信頼してきた男性による行為だったとして、一時は人間不信になりかけたと振り返った。

「怒りというよりも、そんなものは通り越して虚しくなりました。私利私欲のために信じていた者を平気で裏切る人間がいるのだなという、どうしようもないやるせなさです」

●ライセンス料を別会社へ…原告側が主張する3つの手口

訴状などによると、男性は車田さんの関連会社で取締役などをつとめ、経理や出納業務のほか、対外的な交渉などを担っていた。

原告側によると、男性は少なくとも2018年ごろから2024年まで、長期間にわたって原告側の資金を流出させていたという。

会見で、車田さんの代理人をつとめる河合弘之弁護士と野崎智裕弁護士は、手口は大きく3つあったと説明した。

一つ目は、本来、原告側に入るはずだったライセンス料を別会社に振り込ませるというものだ。

男性は車田さんの会社「NEXT WING」とよく似た名称の会社を設立し、自ら代表取締役に就任。本来「NEXT WING」に支払われるべきライセンス料を、自身の会社に振り込ませたとされる。

二つ目は、原告各社の口座から、男性自身や、男性が管理する会社、関係者らの口座への無断送金だ。

三つ目は、保険や再保険を利用した資金流出だった。原告側によると、日本国内で保険に加入して保険料を支払い、それを再保険によって複数の会社に移転。最終的に男性が支配する海外法人に資金が入る仕組みになっていたという。

●発覚のきっかけは国税局の質問状

一連の問題が明るみに出るきっかけとなったのは、国税局による税務調査だったという。

原告側によると、不審な金の動きがあったことから、国税局が2024年1月、車田さん側に質問状を送付した。

ところが、男性は翌月、車田さん本人の筆跡をまねて回答書を作成し、車田さんが色紙などに使用する印鑑などを押して、東京国税局へ提出したという。

車田さん自身は、税務調査が入っていることすら知らされていなかったという。その後、国税局と車田さん側が直接やりとりしたことで、資金の流れが次第に明らかになったという。

問題の発覚後、原告側が男性を追及したところ、男性は一部の行為を認めたとしている。

河合弁護士らによると、男性は流出させた資金の一部を暗号資産に投資しており、その資産が値上がりしていたことなどから、約18億円を回収できたという。

その後、さらに調査を進めた結果、被害額は計約46億8600万円に上ると判断。今回の訴訟では、回収した約18億円を差し引いた約28億8600万円の支払いを求めている。

原告側は、男性だけでなく、資金の受け皿となったなどとして、関係する個人や法人についても共同不法行為責任などを主張している。

画像タイトル 会見する原告側(2026年9月2日、弁護士ドットコム撮影)

●なぜ巨額の資金流出に気づけなかったのか?

車田さんによると、男性とは約25年前、集英社の漫画雑誌「スーパージャンプ」で『リングにかけろ2』を連載していたころに知り合った。

その後、雑誌の休刊を経て、男性は車田さんのマネージャーとなった。車田さんは創作活動に専念するため、経理や対外的な業務を男性に任せていたという。

なぜ、これほど巨額の資金流出が長期間にわたって発覚しなかったのか。

原告側は会見で、男性による「情報の遮断」があったと主張した。

原告側によると、男性は関係者に対して、車田さんについて「人間嫌い」「芸術家だから人と会うのがダメ」「自分以外とはやりとりをしない」などと説明し、編集者やスタッフらが車田さん本人と直接接触することを妨げていたという。

車田さんは会見で、こう否定した。

「私はそんなめちゃくちゃ社交的ってわけじゃないですけど、別に初対面の人でも『いや、どうも』って感じですよ。ざっくばらんですよ」

●「下手をすれば漫画家として潰れていた」

一連の問題が発覚した当初、車田さん側は深刻な状況に陥っていたという。

「会社の口座にはわずかしかなく、多額の納税は不可能な状態でした。下手をすれば車田プロダクションは倒産、私、車田正美自身も漫画家として潰れていたかもしれません」

それでも、代理人弁護士や出版社、アニメ制作会社など多くの関係者の支援を受けながら、この約2年半、創作・執筆活動を続けてきたという。

●車田さん「まだ頑張って執筆を続けていきたい」

会見では、約46億円という被害額を知ったときの心境を尋ねる質問も出た。

車田さんは「なんかデカすぎてピンときませんね。46億。46億あったら何に使います?」と切り出した。

そして「46億って金額で何ができるかとか、どんな贅沢ができるかじゃなくて、どうやってそのお金を生きたことに使えるかですよね」と語った。

今後、被害金を回収できた場合については、「困ってる人たちに全部使っていただいて、汚い金をきれいにしていただく。そのほうがいいですよ」と話した。

最後に、車田さんはファンに向けて、創作を続けていく決意を語った。

「一時は私自身も人間不信にもなりかけたほどです。しかし、これから私はまだまだ読者の皆さん、世界中に聖闘士星矢、車田漫画を愛してくれる人たちのためにも、まだ頑張って執筆を続けていきたいと思っております」

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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