大阪地検トップの検事正だった北川健太郎氏からの性被害をうったえている女性検事が、退職していたことがわかった。女性が9月1日、東京・霞が関の司法記者クラブで開いた記者会見で明らかにした。
「検事の仕事が大好きで、天職だと思っていました」
そう語った女性は「言葉にできないほど悔しい。なぜ被害者である私が仕事を奪われ、職場を追われなければならないのでしょうか」と声を震わせた。
そのうえで、検察には「自浄作用がない」として、検察の問題を調査・検証する第三者機関の設置を改めて求めた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●「検事の仕事は天職だと思っていた」
「検事の仕事が大好きで、天職だと思っていました。自分にしか寄り添うことができない被害者がいる、みんなが犯罪被害に遭わずに安全に暮らせるようにと、身を削って仕事をしてきました」
女性は会見の冒頭、これまでの検事人生への思いをこう語った。
「ですが、8月末で検事バッジを返却し、検事の仕事を失いました。言葉にできないほど悔しいです。なぜ、加害者が今なお罪を償わず、被害者である私が、仕事を奪われ、職場を追われなければならないのか。 言葉にならないほどの絶望と悔しさと…尊厳を踏みにじられました。ただ、たくさんの方々が共感し、私の悲しみを受け止めてくださり、とても心強く救われています」
検事だった女性が退職するまでの経緯(弁護士ドットコムニュース作成)
●自浄作用ない検察に「第三者の監視の目を」
女性はこれまでも、検察組織の問題を外部から調査・検証する第三者機関の設置を求めてきた。この日の会見でも、その必要性を改めて強調した。
「これ以上、検察による犠牲者を生まないためにも、検察の違法性を暴き、組織の問題を究明し、法と人を守る組織に改革する必要があります。 検察組織の問題は市民の生命や安全に直結します。強大な国家権力である検察に、これ以上身勝手な違法行為を許してはいけません。 検察には自浄作用はありません。検察に第三者の監視の目を入れましょう。まずは第三者委員会の設置に向け、よりたくさんの方々に声を上げていただきますよう心よりお願い申し上げます」
女性の代理人を務める田中嘉寿子弁護士(2026年9月1日、東京・霞が関の司法記者クラブで、弁護士ドットコムニュース撮影)
●「組織的に隠蔽」検察審査会に「起訴相当」の議決求める
会見では、証拠隠滅などの疑いで刑事告訴され、その後不起訴となった女性副検事をめぐり、女性側が今年7月、大阪第2検察審査会に「起訴相当」の議決を求めて審査を申し立てた件についても説明があった。
女性は副検事の実名を明かしたうえで、北川氏と不貞あるいは不貞に近い関係にあり、虚偽の供述や証拠隠滅によって、北川氏を捜査や逮捕を免れるようにしようとしたなどと主張している。
さらに、副検事が不起訴になった背景には、北川氏と副検事による犯罪を検察庁が「組織的に隠蔽」する意図があったと指摘。「検察庁が身内の犯罪を公正中立に捜査、処分できないのは明白」として、検察審査会の判断に期待を寄せた。
元検事の女性の記者会見には多くのメディアの記者が集まった(2026年9月1日、東京・霞が関の司法記者クラブで、弁護士ドットコムニュース撮影)
●「犯罪者集団」「腐り切っている」…検察を強く批判
検察組織では近年、不祥事が相次いでいる。こうした現状について、女性は強い言葉を用いて、第三者機関の必要性をうったえた。
「私自身、正直言って、傷つけられ続けて8年が経つので、この件から離れたり、逃げたいし、考えたくない。楽しいことをしたい。 だけど、今自分が受けている経験を皆さんにお知らせしないと、犯罪者集団である検察の違法性がまた埋もれてしまう。 一生懸命働いている職員もいますが、幹部職員が本当に腐り切っているんです。なので、検察に対する第三者の監視機関と、検察や国家権力からの人権侵害に対して独立した調査や検証、再発防止をする組織が必要だと思います。そのために声を上げ続けていかざるを得ないという気持ちです」
記者会見で退職したことを明らかにした元検事の女性(2026年9月1日、東京・霞が関の司法記者クラブで、弁護士ドットコムニュース撮影)
●「声をあげよう」とはもう言えない
会見の最後、女性は、被害をうったえたことで自身が置かれた状況への思いを語った。
「私がこれまで、どれだけ一生懸命仕事をしてきたのか、どれだけ熱心にやってきたのかは、この事件で何も立証してもらえないんです。 でも、被害者は被害をうったえたらこんな目に遭うんです。だから私は、『皆さん、声を上げましょう』とはもう言えない。被害を受けても、声を上げたら後悔するから。 だけど、それだと駄目だから、自分のことを全部話して検察を変えるという行動に出るしかないということをご理解ください」